ウェブアクセシビリティ向上への道 - だれもが使えるサイトを目指して -
No.12 日常業務における「みんなの公共サイト運用モデル」の実践(2)
「簡易点検ガイド」の活用
[ 月刊『広報』 平成18年7月号掲載 ]
執筆担当
米田 佳代
(よねだ かよ)
行政の広報担当者に役立つ実務記事などを中心とした行政広報専門誌、 月刊『広報』 で連載している「ウェブアクセシビリティ向上への道 – だれもが使えるサイトを目指して -」の記事を、日本広報協会様のご好意により、転載させていただきます。
今回は、前回に続き、総務省「みんなの公共サイト運用モデル」( 注 )の手順書類集の中から、日々のホームページの追加・更新に役立つ「簡易点検ガイド」の活用方法をご説明します。
だれでもできる点検方法を紹介した「簡易点検ガイド」
新規にページを追加したり更新したりする際、ページの公開前に、各ページにアクセシビリティ上の問題がないかを点検し、必要に応じた修正を行うことが重要です。点検するには、HTMLなどの文法が正しく書けているかを点検するソフトや、ページ内にアクセシビリティ上の問題がないかを点検する専門のチェックソフトを使用したり、全盲の視覚障害者が使っている音声読み上げソフトや色覚障害者の色の見え方を再現するソフトで利用者の環境を再現したりするなどの方法があります。
しかし、実際に自治体の職員がこれらのソフトを使いたいと思っても、新たにソフトを買う予算が取れない場合や、パソコンに新しいソフトをインストールすることが認められない場合もあるでしょう。そこで、特別なソフトを使わなくても、普段業務に使用しているプリンターやパソコンがあればだれでも簡単に点検できる方法を紹介したものが、「簡易点検ガイド」です。今回は、その中から一部をご紹介します。
色で表した情報を正しく取得できるか点検する
初めに、色についての確認方法です。自治体ホームページでよく見受けられるのが、入力フォームの「赤字は入力必須項目です」や、ごみ出しカレンダーの「青色の日は燃えるゴミの日です」など、色だけで情報提供をしている例です。これでは、音声読み上げソフトでホームページを利用している人や、色覚に障害のある利用者が正しく情報を取得することができません。
そこで「簡易点検ガイド」では、「白黒プリンターでページを印刷する」という方法を紹介しています。まず、点検対象ページをInternet Explorerなどのブラウザ(ウェブページ閲覧ソフト)で開き、白黒のプリンターで印刷します。印刷された色のないページをよく見て、色で説明されているために内容や操作方法を理解できない箇所はないか、背景色と文字色のコントラストが低いなどの理由で識別できない箇所はないかを確認します。
リンク先を予測できるか確認する
音声読み上げソフトでウェブページを利用している視覚障害者にとって、ページをすべて読み上げるのは非常に時間がかかります。そこで、次にどこのページに進むか考える際や、何度も利用しているページを再度利用する場合などに、多くの音声読み上げソフト利用者が、リンク箇所だけを拾い読みする機能を使ってページを操作しています。
「簡易点検ガイド」では、この拾い読み機能を利用する場合でも、正しくリンク先の内容を理解できるかを確認するために、「リンク箇所のテキストだけを読んでみる」という方法を紹介しています。例えば、「防災に関する情報はこちら」「防犯に関する情報はこちら」のように、「こちら」とか「ここをクリック」といった部分だけにリンクが張られているとどうなるでしょうか。この場合、リンク箇所だけを拾い読みすると「こちら、こちら、こちら……」となってしまい、それぞれのリンク先にどんなページがあるのか予測することができません。利用者がリンク先を容易に予測できるように、どの部分にリンクを張ればよいか、リンクの言葉をどうするか、といった工夫が大切です。
画像情報が正しく伝わるかを点検する
全盲の利用者は写真やイラストなどの画像を見ることはできませんが、画像の内容を端的に表した代替テキストを用意しておけば、音声読み上げソフトでそのテキストを読み上げることで、内容を知ることができます。
「簡易点検ガイド」では、すべての画像を非表示にした場合に、画像に代替テキストが入っているか、すべての意味が通じるかを点検する方法を紹介しています。Internet Explorerの場合は、「ツール」>「インターネットオプション」>「詳細設定」で「画像を表示する」のチェックを外します。特に画像にリンクが設定されている場合は、画像を表示しなくてもリンク先のページの内容が予測できる代替テキストを入れることが重要です。
簡易点検ガイドですべてが点検できるわけではない
今回は、「簡易点検ガイド」の中から一部の点検方法をご紹介しました。このほかにも、ブラウザで点検対象ページを開いて目で見て確認する方法や、マウス操作が難しい人でもキーボードだけでページを操作できるかなどを確認する方法なども紹介されています。ぜひ、実際に試していただきたいと思います。
また、「簡易点検ガイド」で点検できる方法は、ウェブアクセシビリティについての点検項目のうち、一部に限られます。可能であれば、チェックソフトを利用したり、利用者の環境を再現してみたりすることが重要です。音声読み上げソフトがあれば、ご自分の自治体のホームページを読み上げてみることをお勧めします。実際に音声で聞いてみることによって、画像の代替テキストや表組みが不適切なところ、一つの単語がスペースで区切られて意味が通じないところに気づくことができます。
点検で問題が見つかったら修正しよう
「簡易点検ガイド」に付属して「簡易点検結果記入シート」というワークシートも用意されています。これは、各点検ページにつき1枚使用し、点検結果を記入したり、問題箇所へどう対応したかを記録したりできるようになっています。
点検の結果、問題が発見された場合はそのままにせず、修正することが重要です。「簡易点検ガイド」の各点検項目の後には、【レベル1 1-10】といった【詳細検討シート対応項目番号】が記載されています。これは、前号で紹介した「詳細検討シート」の該当番号を示しています。「詳細検討シート」には対応方法の例が書かれていますので、これらを参考に問題箇所を修正した後で、ページ公開に進みましょう。
- 注 みんなの公共サイト運用モデル
- 平成16年11月17日から開催された「公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会」の検討成果として、17年12月15日に総務省より発表。アライド・ブレインズでは、総務省の委託を受けこのモデルの検討を支援してきた。
- 総務省サイト「みんなの公共サイト運用モデル」