- データで診る自治体サイト -
No.4 構造化対応の傾向と求められる対応
[ 2007年2月28日 ]
執筆担当
目次 徹也
(めつぎ てつや)
文書を読みやすくする工夫
文書は、一般に「大・中・小の見出し」「段落」「箇条書き」などによって構成されています。これらを文書の構造と言います。
たとえばこのコラムでは、見出しを複数設け、背景をグレーにし文字は太字として、内容を書いた段落部分よりも目立つように表現しています。凝ったデザインとは言えませんが、同じ文字の大きさでだらだら続くよりは多少読みやすくないでしょうか。
文書の構造は、多くの場合、読み手が内容を読みやすいように、文字の大きさや色や太さの違い、ページ内での配置の違いなどで表現されます。皆さんもWordなどを使って文書を作成する際は、配慮して作成していると思います。
構造化って何だ!?
しかしご存知のとおり、ウェブサイトにアクセスするのは目が見えている人だけとは限りません。たとえば、音声読み上げソフトを使い、音で内容を読んでいる人は、文字の大きさや太さを違えてあっても、そのことが分かりません。また、検索エンジンなどのプログラムがサイトの内容を解析する際も似たようなことが起きます。ページの中のどの部分が見出しなのか、どの部分が強調して伝えたい部分なのかを把握出来ないことが多いのです。
このようなウェブサイトへの多様なアクセスに対応するために行うのが、文書の構造指定(構造化)です。具体的には、HTMLのソースで構造を示すタグを付けるという対応を行います。ページ内で登場する様々な文章や画像などに対して、この部分は「見出し」、この部分は「段落」、この部分は「強調して伝えたい部分」といった構造を示すタグを付けます。
後に詳しく記載しますが、この構造化は、今後のウェブサイトにとって非常に重要な対応となります。
対応の出来ている自治体と出来ていない自治体の差が大きい
「2006全国自治体サイトアクセシビリティ実態調査」では、ウェブサイト解析プログラムCRONOS2を用い、自治体サイトにおける構造化の状況を調査しました。調査の結果は大まかに以下の通りとなりました。
- (1)構造化指定の出来ているページが、サイト全体の5割以上・・・13自治体
- (2)構造化指定の出来ているページが、サイト全体の1割以上(5割以下)・・・46自治体
- (3)構造化指定の出来ているページが、サイト全体の1割以下・・・121自治体
上記のうち(1)は、サイト全体で概ね構造化指定が出来ていると考えられます。13自治体のうち6自治体は、Aレベルの条件である「構造化指定7割以上」を超えており、そのうち5自治体は9割を超えています。次に(2)の内訳を見ると、3割を超える自治体は、46自治体のうち8自治体で、約半数は2割以下です。これらの自治体は、サイトの一部分で構造化指定に着手している状態と考えられます。最後に(3)の中には1%以下のところも32自治体あります。構造化をほぼ全く行っていないか、不適切な指定になっている可能性が高いと考えられます。
構造化指定の出来ているページが9割を超えている一部の自治体と、数%にも満たない自治体とでは、その差はページのソースを見ると一目瞭然です。調査対象の180自治体については残念ながら後者が大部分を占めましたが、このような自治体サイトは、時代の流れに対応できていない古い作りのページのまま運営されている状態であると言えます。
構造化のメリットとは?
構造化指定の出来ているサイトと出来ていないサイトとで、具体的にどのような違いが生じるでしょうか。様々なケースが想定されますが、いくつかをご紹介します。
- 音声読み上げソフトなどの様々な利用者支援機能が有効になる
- 検索エンジンのキーワード検索でより適切に結果表示されるようになる
- リニューアルやCMS(コンテンツマネジメントシステム)導入時の、ページ内容の移し替えの負荷(コンテンツ移行負荷)が激減する
コンテンツ移行負荷に多大な差が生じる
このうち、音声読み上げソフトなどでの効果は利用者側で感じられるものです。ウェブサイトの利用形態は日々多様化しており、サイト担当者には、そのような時代の変化に合わせ、ページの作り方も適切なものへと変えていくことが求められています。
また、情報探索において検索エンジンの役割が非常に大きくなった昨今では、検索結果表示に適切に表示されるための対策(SEO:Search Engine Optimization)も、極めて重要になっています。
さらに、サイト担当者にとって直接影響があるのは最後の「移行負荷」への影響でしょう。多くのサイトでは、2~4年程度の周期でリニューアルプロジェクトが行われます。また、CMS導入に伴いシステムへ各ページの内容を移行するプロジェクトも多数行われています。このようなプロジェクトにおいては、構造化指定がきちんとなされそれに合わせた適切なHTML記述になっているページを扱う場合と、そうでない旧来のページを扱う場合とでは、移行の負荷が全く異なります。ページ数が数万を超えていることの多い自治体サイトでは、この差はきわめて大きく、経費に換算すると数百万円から場合によっては数千万円の違いが生じる可能性があります。
次回(3月7日予定)は、調査結果とCMSとの関係をテーマにコラムを掲載します。昨今導入事例の増えているCMSは、アクセシビリティ対応から見た場合に効果があると言えるでしょうか。上記の移行負荷の話も含めご紹介したいと思います。
- ウェブサイト解析プログラムCRONOS2
- 「2006年自治体サイト全ページアクセシビリティ実態調査」に使用したCRONOS2は、サイト内の全ページを解析し、アクセシビリティをはじめとするサイト内の様々な問題を統計的に明らかにします。
- 利用者に公開されている全ページについて、問題の有無を確認できます。
- 構造化指定の状況を、ディレクトリ別に集計することが出来ます。
- オプションサービスの「基本解析データ」を使い、構造化指定に問題のあるページを具体的に把握し、修正計画の検討や、修正指示に活用することが出来ます。
- 2006年自治体サイト全ページアクセシビリティ実態調査
- アライド・ブレインズでは、平成18年8月から10月にかけ全国約180自治体のホームページを対象に実施。調査概要と結果の詳細は、ウェブアクセシビリティ実用サイト「A.A.O.」で紹介している。