大妻女子大学 金城ゼミインタビュー
第2回:大学生が指摘する地方自治体サイトの問題点とは
[ 2009年3月30日 ]
前回に引き続き、大妻女子大学・社会情報学部・社会情報処理学専攻の金城光(きんじょうひかり)先生と、卒論で地方自治体のウェブアクセシビリティを研究された4年生の船井絵理さんへのインタビューをご紹介します。大学生の目から見た地方自治体サイトのアクセシビリティはどうだったのでしょうか。
研究目的
船井さんは卒業論文「地方自治体のWebアクセシビリティ ~インターネット利用状況調査とサイト実証実験から探る~」で、ウェブアクセシビリティの視点から地方自治体のウェブサイトの問題点を明らかにし、改善点を探ることを目的として、アンケートとサイト実証実験を実施されました。
アンケートでは、学生さん131名を対象に、インターネット全般の利用状況とウェブアクセシビリティの認知度を把握した上で、地方自治体のウェブに対する信頼度、地方自治体のウェブサイトの利用率を明らかにしました。
図1 インターネット利用時に使いづらいと感じること(図1の説明)
インターネット利用時に使いづらいと感じることは、図1のように、「必要な情報にたどり着きにくい」「サイトの中で迷いやすい」「トップページのメニューから情報が探しにくい」など、サイト構造上の問題が上位にあがりました。
「ウェブアクセシビリティ」という用語の意味を知っている人は2割以下とのこと。地方自治体のサイトを利用したことがある人は都道府県で13%、市町村では15%と少数であり、利用しない理由は、サイトの存在を知らなかった、欲しい情報がないなどでした。
様々なメディアから提供される情報の信頼度について聞いたところ、地方自治体については「窓口」「区報・市報・広報誌」「ウェブサイト」の順となりました。窓口の信頼度が高いことについて、船井さんは「行政の手続き等を行うとき、窓口の人を通して行うことが多く身近に感じているからではないか」と考察しています。
調査を進めるにあたって
アライド:アンケート調査を進めるにあたって工夫した事や困った事はありましたか。
船井:インターネットの使いづらい点をアンケートでどう聞くか困りました。友達に聞いても、インターネットを使っている途中で利用できなかった場合、見切りをつけて使うのをやめてしまうので、具体的に思い出せるという人がなかなかいませんでした。
アライド:そこはどう工夫されましたか。
船井:最初に、利用時に使いづらいと考えられる選択肢をこちらからたくさん用意しておいて、当てはまるものを選びながら思い出してもらって、その後具体的に使いづらい点を記入してもらいました。
アライド:素晴らしいですね。弊社でコンサルタントとして活躍してもらえそうです。金城先生のゼミでは、アンケートの作り方についてのご指導もされているのですか?
金城
アンケートは対外的なものなので作成の指導やチェックもします。しかし、基本的には自分で選んだテーマに対して責任を持って取り組んでもらうという方針です。相談はありましたが、彼女自身で自主的に進めていきました。
アライド:アンケートの他に「サイト実証実験」にも取り組まれたそうですが、どのように行われたのですか。
船井:インターネットで見つけた「ユーザビリティに注目した自治体ウェブサイトの評価に関する一考察(PDF)」という研究を参考に、自分でアレンジして、ユーザーが実際にサイトを操作している様子をビデオで撮影する手法をとりました。大学生から高齢者まで4名のユーザーに手続きや申請の仕方についての質問をし、サイト内から情報を見つけもらって、情報の探しやすさなどを評価してもらいました。
サイト実証実験から明らかになった5つの問題点とは
船井さんのサイト実証実験の結果、5つの問題点が明らかになりました。
1.トップページのメニューから情報が探しにくい
- あるメニューをクリックしてみたところ、メニュー名から想像していたコンテンツがない。
- トップページに配置されているメニューの数が多すぎて、選ぶのが大変。
- 似たような名前のメニューが複数あり、どれを選んだら良いかわからない。
2.サイトの中で迷いやすい
- リンクをたどっているうちに、どのコーナーの情報を表示しているのか分からなくなる。
- 自分が探している情報と関係のない情報がたくさん出てきてイライラする。
- 少し前に見ていたページに戻ろうと思っても、どこにあるのか分からない。
3.なかなか情報にたどり着けない
- 頻繁に使う情報なのに、何回もクリックしないと表示できない。
- 個別のコーナーのメニューページで、たくさんのリンクが出てきて、その中から選ぶのに時間がかかる。
- ページ内の情報の配置が不規則で、どの場所に何があるのかすぐに分からない。
4.情報にたどり着いても情報内容や、情報量に満足できない
- ユーザーが期待した情報内容や、情報量のニーズに十分に応えていない。情報内容、情報量のミスマッチ
5.全体的にサイトの基本構成に不備(特に高齢者にとって)
- そもそも探したいメニューが出てこない。
- メニューの文言(用語)が分かりにくい。
- 画面上でのメニューの位置(レイアウト)が分かりにくい。