ウェブアクセシビリティJIS規格の改正に備える~公共機関ホームページに求められる対応
No.3 ウェブアクセシビリティJIS規格改正のポイント(2)
団体ごとに具体的な対応目標の設定・公開が求められる
[ 月刊『広報』 平成22年3月号掲載 ]
執筆担当
大久保 翌
(おおくぼ あきら)
行政の広報担当者に役立つ実務記事などを中心とした行政広報専門誌、 月刊『広報』 にて、連載「ウェブアクセシビリティJIS規格の改正に備える~公共機関ホームページに求められる対応」を開始しました。
日本広報協会様のご好意により、転載させていただきます。
ウェブアクセシビリティのJIS規格「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス- 第3部:ウェブコンテンツ(JIS X 8341-3 )」(以降、JIS X 8341-3と記載)の改正が予定されています。
3回目は、2009年1月に発表された改正原案の内容に基づき、改正によって現行のJIS X 8341-3から大きく変わる点を確認しましょう。
変わること【1】現行のJIS X 8341-3とは全く異なる構成に
改正により、JIS X 8341-3の構成が現行とは大きく変わります。
今回の改正は、ウェブアクセシビリティの配慮に関する国際標準として2008年12月11日にThe World Wide Web Consortium (W3C)より発表されたWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0と、日本の国内規格であるJIS X 8341-3の整合を取ることに力が注がれました。
WCAG2.0は本編とその関連文書によって構成されています。本編は、制作技術や利用者環境が変化しても有効に活用できるように抽象的な表現になっており、「Understanding WCAG 2.0」や「Techniques for WCAG 2.0」といった複数の関連文書によって内容が補完される構成となっています。
改正後のJIS X 8341-3に関しては、現時点で補完文書が発表されていません。内容を理解するためには、改正原案とともに、「Understanding WCAG 2.0」や「Techniques for WCAG 2.0」といったWCAG 2.0の関連文書をあわせて参照してください。
変わること【2】団体ごとに達成等級及び達成基準を設定する
現行のJIS X 8341-3では、ホームページ等(以降、HPと記載)の制作に関し対応すべき項目が39項目定められています。
これらは「・・・しなければならない(いわゆる必須項目)」と「・・・することが望ましい(いわゆる推奨項目)」とに分かれていますが、各団体における対応項目の選定について、具体的な指針はありません。対応する項目の数や種類などによるレベルも設定されていません。
そのため、公共機関HPにおけるこれまでのアクセシビリティ対応は、「JIS X 8341-3を尊重する」、「JIS X 8341-3に基づく」、「JIS X 8341-3を踏まえる」といった曖昧な目標に基づいて取り組まれている場合が多々ありました。
改正により、HPの制作に関し対応すべき項目(改正後は「達成基準」と呼ばれる)は61項目に細分化される予定です。この61項目にはそれぞれA、AA、AAAのレベル(「達成等級」と呼ばれる)が設定されます。
各団体は、目標とする達成等級を選定した上で、61項目の中から自団体が対応する達成基準を選定することが必要となります。
変わること【3】目標の公開が求められることにより外部評価がより活発に!?
皆さんにとっての大きな変化は、各団体が設定した目標を文書化しHPで公開することが求められるようになることです。
目標の公開は、外部の利用者団体、研究機関、メディア、個人の利用者などが、各団体のHPのアクセシビリティが目標を達成しているかどうか(JIS X 8341-3の要件を満たしているかどうか)を評価し易くなることを意味します。JIS X 8341-3の改正によって、外部からの評価が活発になると予想されるのです。
各団体は、自団体が設定した目標に基づき、ウェブアクセシビリティ配慮をこれまで以上に確実に達成することが求められます。また、目標の達成状況及び課題の把握、課題への対処策の検討を、定期的にきめ細かく行なうことが重要となります。
次回以降は、改正にそなえる具体的な対応について解説を行なう予定です。