A.A.O.ユーザーテストレポート
3-3.吉田有紀子さんのテストを終えて
ユーザテストに参加された感想(吉田さん)
A.A.O.サイト全体のご感想はいかがでしたか?
A.A.O.からの発信があり、「障害者の声」が出せ、情報がたくさん載っているんだけど、このサイトを使って障害者同士のコミュニケーションが取れる掲示板のような場所があると良いと思います。
ユーザテストに参加して感じたことをお聞かせください。
初めて見るページなので時間はかかったけれど、探したい情報を探すことができたと思います。またこのサイトを見ることで、サイト内を検索するツールの必要性とか今まで自分が気付かなかったことに気付けたことがあったのが良かったと思います。
今回は、日常的に使っているホームページリーダーでテストしましたが、IE+PC-Talkerの環境ではどうでしょうか。このサイトに限らずどのサイトでも難しいのではないかと思うのですが。A.A.O.サイトがこの組み合わせでどういった感じになるのか聞いてみたいと思います。感想、送りますね。
後日届いた感想(1)PC-Talkerでの利用について
早速PC-Talkerで見てみました。思ったよりは見づらくありませんでした。 リンクしか読まないけど、内容が分かりました。そこで発見したのですが、「ユーザーとの連携」の中に「音声で使う」実用サイトリンク集や情報投稿できるページがあるんですね。これはとっても便利だし良いなと思いました。
ただ「情報投稿」のリンクが2つありますが、違いが分かりません。全文読みにしてみましたが、分かりづらかったです。ホームページリーダーでも見てみたのですが、タブで移動するとリンクしか読まないのは同じなのですが、左右カーソルでその前後の文が読めるので良いです。でもこの「情報投稿」は1つ目と2つ目、何が違うのか分かりませんでした。
ページの初めにある「本文へ」のリンクは、ホームページリーダーと読み方が違って「音声読み上げ等による利用への配慮として、ナビゲーションを飛ばして本文に進みます」と読み上げるのですが、ちょっと違和感がありました。PC-Talkerを使っての感想とホームページリーダーを使っての感想が混ざってしまいましたが、PC-Talkerを使っての感想としては、リンクだけ見ても内容が分かりやすいし、ページの作り自体は問題ないと思います。
後日届いた感想(2)ご意見・ご指摘フォームの読み上げについて
ホームページリーダー(3.01)で「ご利用環境」の選択肢を読み上げなかった件に関して、他のパソコンで試したところ、HPR3.01ではタブで移動すると「ご利用環境 オフ」「一般のブラウザーを利用 オフ」「その他 オフ」と続きます。
ご利用環境の所で左右キーを押せば「音声環境…」と読み上げますが、これも「ご利用環境」の後に右カーソルを押しても「一般の…」と 読み上げてしまうため一度戻る操作をする(左カーソルを押す)と読むという状況です。
でも多分この状況だと見えなければ(あることがわかっていなければ) 見逃してしまうと思います。 以前のテストの時は「ご利用環境」のところで下カーソルを押さないと読みませんでした。どうやら「ご利用環境」の後ろにチェックが入るようになってしまっているようです。
ご利用環境の後(音声環境の前かな?)にブランクと言うのですが、これは関係あるのでしょうか?
わかりました! 全文読みさせてるとちゃんと読むのですが この状況(送信フォーム)などでは全文読みさせるということはあまりなく文字を入力しながらの作業のためタブでの移動が多いと思います。多分アライドさんでは全文読みさせたんじゃないかな?それだとチェックも入れづらいですよね?入れてみてください、きっと「ご利用環境」の所にチェックが 入ってしまうはずです。
PC-Talkerではお手上げです。 何度かやってみたのですが、その度に違う症状(読み上げ方)をするため何とも言えないのですが、タブで移動しても左右上下カーソルで移動しても、とりあえず「音声環境」は読みません。これもこの状況がわからないと(わかっていても?)操作は難しいと思います。
後日届いた感想(3)ご意見・ご指摘フォームの読み上げ改善について
「ご意見・ご指摘」の送信フォームの読まない所ですが、1つ1つにラベルをつければ読める(タブで飛べる)ようになるようです。
PCTでもXPリーダーでもやはり読まないので、唯一HPRでテクニックがあればチェックを入れられるという状況です(読み上げるけど「利用状況」にチェックが入ったように聞こえてしまうようです)。
テストに立ち会った立場からの感想(1) (岩渕さん)
「アクセシブルなウェブをめざす提供者と利用者のための実用サイト」と銘打っているだけあって、ユーザビリティに優れたサイト作成をしており、音声ブラウザを用いたA.A.O.の閲覧が思っていた以上にスムーズだったことにホッとするとともに、さすがA.A.O.との感銘を受けました。
ただ、そうであっても全盲の視覚障害者がサイトやページの全体像を把握するためには最後までひたすら聞き続けるしかないわけで、A.A.O.のトップページをスクリーンリーダー(PC-Talker)の標準スピードで読ませてみたところ実に6分!「ニュース」では16分もかかりました。
目の見えない人には斜め読みや流し読みができないという単純ですが冷厳な事実を、サイト作成者はしっかりと心に刻む必要があるということです。そして、その上で全体像を把握できるような何らかの工夫を加えたいものです。
また、集中力を切らさず最後まで聴かないと全体をイメージできないことを考えると、同一ジャンルの中での膨大な目次は致し方ありませんが、同じページの中に複数のジャンルがあり、それぞれのジャンルの中で細かくリンクが張ってあると、把握するのがかなり大変なのではないかと思いました。やっと最後まで聞き終えて、いざお目当てのサイトに行こうと思ったとき、目で読んでいるなら斜め読みでそのサイトを発見できますが、耳で読んでいる場合はまた最初から聞かなくてはなりませんから。
再訪問したいと思ったときでも同様です。目で読んでいる場合は訪問済みのサイトのリンクの色が変わっていることで発見を助けてくれますが、耳で読んでいる場合、PC-Talkerが訪問済みを知らせてくれるわけではありません。
その点、ホームページリーダーだと訪問済みのリンクを違う声で知らせてくれますので、ウェブの閲覧で苦労している人は、それだけでも(いや、それだけでは無いですが)ホームページリーダーを試してみる価値があるということを、今回のテストとその後の自分なりの検証であらためて思いました。
ちなみに、ホームページリーダーなら「A.A.O. – Webアクセシビリティ実用サイト」を「A.A.O. ウェブ アクセシビリティ じつようさいと」と読んでくれますが、PC-Talkerだと「A ピリオド A ピリオド O ピリオド マイナス ウェブ アクセシビリティじつようさいと」と読むんですね。視覚障害者の誰もがホームページリーダーを用いているわけではありません。スクリーンリーダー+一般のブラウザでアクセスしている人が大勢いることを考えると、「A.A.O.」は「A.A.O.」のほうが聞きやすいんじゃないかと思います。
今時わざわざ「N.P.O.」や「P.T.A.」とは書きませんし、近ごろ話題の「TBS」同様、「A.A.O.」もウェブアクセシビリティの世界では既にメジャーということで(ですよね?)、今回のユーザーテストを機に日本語の中では「A.A.O.」と記してみてはいかがでしょうか。目で読んでいる私としても、文字と文字の間に挟まって見える微細なピリオドに見えづらさを感じておりましたので。
テストに立ち会った立場からの感想(2) (岩渕さん)
HPRでの追試の結果は、吉田さんの書いているとおりでした。PC-Talkerでの全文読み上げでは「ご利用環境」を読み上げました。但し、「お名前」「問題ページ」「ご利用環境」(以下省略)を3回もお読み上げくださいます。
タブキーでの移動時の読み上げでは 「ご利用環境」が選択されたところで 「音声読み上げソフトを利用のラジオボタン」と読み上げます。「その他の場合」からシフトタブで戻ると「その他のラジオボタン」と読み上げます。
「ご利用環境」が選択され 「音声読み上げソフトを利用の選択」と読んだところで 「→(右矢印)キー」を押すと 「一般のブラウザを利用」が選択され「一般のブラウザを利用」と読み上げます。この状態で 「↑(上矢印)キー」か「←(左矢印)キー」を押すことで 「音声読み上げソフトを利用」が選択され「音声読み上げソフトを利用」と読み上げます。
敢えて読ませない設定にしているのでないなら「ご利用環境」を 読ませるのはもちろんですが、選択肢の順番を入れ替え、最初に 「一般のブラウザを利用」を、次に「音声読み上げソフトを利用」、最後に「その他」にしてはいかがでしょうか。
これは今回のケースで初めて感じた感想ではありません。以前より送信フォームの類に遭遇するたび、選択肢の順番は実際に選択するユーザーのことを考えて並べてほしいものだと思っていたのです。
こういう当たり前のことは(当たり前のこと過ぎて)配慮が必要なチェック対象から抜け落ちてしまうのかもしれませんね。もっともこのあたりって作成担当者の問題ではなく、実際に作成する以前の(材料集めの)段階で考えておくべき事柄ではありますが。
アライド・ブレインズA.A.O.担当者の感想
ホームページ・リーダーやPC-Talkerで繰り返しテストしていただき、どうもありがとうございました。吉田さんのレポートを拝見し、あらためて、音声読み上げソフトを利用されている方が少しでもスムーズに情報を把握できるように、サイト提供者側はページ内、サイト内の構造をわかりやすくする工夫が重要なのだと実感しました。
特に、「ニュース」ページなど、新しい情報をタイムリーに追加していくことにばかり力を入れ、いつのまにか情報量が膨大になってしまったページもあり、例えば6ヶ月ごとにページを分ける、目次をつけるなどの整理が必要です。サイト内検索も必須ですね。
また、ホームページ・リーダーの全文読みでチェックして問題なしと思っていたフォームで、実は音声利用者の方が普段どおりにタブ移動しながら入力していくと、HTMLのタグでラベルの設定方法が不適切であったため、読み上げられない選択肢があったということがわかりました。
今回、ラベル設定のミスと同時に、音声で聞きながらもついつい目で画面を見てマウス操作してしまう私達のチェック方法のミスも指摘していただけたことは、大きな収穫です。「ご意見・ご指摘フォーム」は早速修正し、タブ移動でもきちんと選択肢が読み上げられるようにいたしました。また、岩渕さんからご指摘のあった選択肢の順番も修正しました。
少しずつ新しい技術を身につけながら、より利用しやすいA.A.O.サイト作りを心がけてきたつもりですが、逆に、「ご意見・ご指摘フォーム」のようにサイト開設当初に作ったページにミスがあるなど、配慮や情報整理のレベルがサイト内でまちまちになっている可能性があります。今回いただいたご意見をもとに、12月末までにサイト全体を見直していく予定です。ご協力どうもありがとうございました。