第8回「情報分類の根本的な見直しと入念な事前準備による業者選定」~糸島市ホームページのリニューアルとCMS入れ替え~(後編)
[ 2017年4月14日 ]
ゲスト
糸島市企画部秘書広報課広報係 主査
田中伸治さん
1.「良きパートナー」となる業者を選定するために行ったこと
アライド:それでは、リニューアルの実施において重視された業者選定についてお聞かせください。
田中:私たちがリニューアル準備を行った時期は、IT業界全体が需要過多で、マンパワーが不足している状況でした。つまり、業者選定と言いつつ、リニューアルを成功させるためには、一方で業者に「糸島市で仕事をしたい」と選んでもらうことが必要であり、糸島市としてそのような心構えで準備に当たることが重要だと教えていただきました。そうしたアドバイスのおかげで、書類選考を経て3社のプレゼンテーションの日を迎えた際には、アライドさんから「提案書を提出し、プレゼン評価に残った3社は、どの業者を選んでも一定以上のレベルが期待できる。通常ここまで有力候補が参加してくるのは、希なことですし贅沢な状況ですよ」と評価していただきました。
アライド:今回のリニューアル業者の入札に、このような有力な業者が参加してくれた理由は何でしょうか。
田中 伸治さん
田中:これも事前準備作業の一つとして実施しましたが、実際にリニューアル業者の調達に入る1年前から業界の動向を理解し、まとまった時間をとって調査したり、実際のCMS機能を確認したりできたことは大きかったです。そうすることで、糸島市の思い描いたホームページを実現しうる「パートナー候補」として期待できる業者が、ある程度絞られたことは重要でした。
アライド:提案書の審査を経てプレゼンテーションの段階では、実績もあり、他の自治体でもある一定レベル以上の品質を有するリニューアル業者が選ばれましたが、プレゼンテーションでの評価については、どのような点を重視されましたか。
田中:まず、プレゼンテーションでのポイントは「提案書に書かれていることを本当に実現できるのか、実施してもらえるのか」をきちんと丁寧に確認するということです。今回のプレゼンでは、提案書の審査段階では最有力だった業者の説明が、その内容においてリニューアルの根本に係わる問題を含んでいたことが分かりました。糸島市が気付かなかったその点をアライドさんからの質問によって引き出し、全員で確認できたことは大きかったですね。プレゼンの説明も上手だったので、我々だけの評価だと選ばれていた可能性がありました。実績も多く事前の評価が最も高い業者でしたので、専門的知識を有する方に支援してもらうことは大切だと思いました。前回のリニューアル時の業者選定では、まさしくプレゼン内容をそのまま信じてしまったために後々苦労したわけです。また、別の有力候補者は、提案内容の実施については、大きな問題はありませんでしたが、糸島市ホームページを「糸島市と一緒になって良いものにしていこう」という気持ちが感じられませんでした。一方的に自分たちのやり方を押しつけてくる感じがあり、「これは一緒にプロジェクトを進めることは難しい」と判断しました。業務をすべて丸投げするのであれば、この業者でも良いのかも知れませんが、それでは糸島市にとって理想のホームページに近づけることはできないと考えました。審査員の方からも、「こことは一緒にやっていけないでしょう」という意見がありました。これらのやり取りは、各社のプレゼン後に毎回、時間を取って全員で協議を行ったものです。プレゼンの直後なので説明内容の確認や業界用語等で不明な点・専門的な内容を理解でき、その上で評価することができました。正しい評価を行うために、とても重要な時間だったと思います。
そして、最終的に現在のA社さんとの契約に至りました。A社さんには、単なる企画提案書や契約書だけでは推し量れない部分として、「本当に良いものを作りあげたい」という気概で、仕事に当たっていただきました。「良きパートナー」として申し分ない仕事をして頂き、ホームページリニューアルはつくづく業者選定が命だと痛感しました。
2.仕様書と契約書の役割
アライド:業者選定ではもちろんのこと、リニューアルを実施していく際に重要な役割を担っていると思われる仕様書について、重視された点をお聞かせください。
田中:今回のリニューアルを通して、リニューアルの実施内容や契約内容の基になる「仕様書」は、とても重要だということを痛感しました。今回の仕様書は、アライドさんの支援を受けて作成しました。前回のリニューアル時の仕様書とは、記載内容の量、質ともに全く異なり、数多くのリニューアルプロジェクト管理を支援された経験やノウハウが随所に活かされていました。糸島市にとって、リスクとなりうる箇所を想定し、回避できるように工夫されています。この仕様書は、プロジェクトを進める中でもとても重要な役割を持つことになりました。
さらに、作成した仕様書を読み込むことで糸島市のプロジェクトメンバーの認識を深められました。リニューアル業者も、糸島市のリニューアルに意気込み・真剣さをそこから理解することができたでしょうし、より良いものにしようというやる気にもつながったと思います。
話は少し戻りますが、綿密に記された仕様書によってスキルレベルの低いリニューアル業者が入札に参加できなかった、ある意味で篩に掛けることができたと考えます。