第9回「関連サイトを含めた全庁的なアクセシビリティ推進」~川崎市の新たな取組と重視していること~(後編)
[ 2017年7月12日 ]
ゲスト
川崎市総務企画局シティプロモーション推進室 広報担当 放送・映像 担当係長
遠藤佳宏さん
1.公式ホームページ以外のホームページ等への働きかけ
アライド:平成28年度から、公式ホームページ以外のホームページ等を担当する職員、指定管理者等も対象に加え、職員研修を実施されました。
遠藤:平成28年4月に総務省みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)が出て、市公式ホームページ以外のホームページも取組対象に入れることがあらためて求められました。市公式ホームページはシティプロモーション推進室が管轄していますが、各事業の特設ホームページや、指定管理施設等のホームページ(以下、「外部サイト」と記載)は、あくまでも他の所管部局や指定管理者が管理・運用しており、当室ではコントロールできません。そこで、外部サイトを運用している所管部局に外部サイトについての照会をかけたり、指定管理者を含めた関係者にウェブアクセシビリティに関する研修への参加を促したりといった取組を初めて行いました。
2.ウェブアクセシビリティガイドラインを照会の拠り所に
アライド:外部サイトを運用している所管課に対して、どのように照会をかけたのでしょうか?
遠藤:川崎市では、前回のリニューアルの際に、職員向けのホームページ作成ガイドラインと外部発注用のウェブアクセシビリティ対応基準書を策定しました。その中で、外部サイトを構築する際は、これらのルールに則るようにと示されています。そこで、どの部署がどのような外部サイトを持っているかを調査する際に、併せてガイドラインや対応基準書の準拠を求めているかどうか、仕様書に記載があるかどうかなどを確認することとしたのです。川崎市がガイドラインを作成したのは平成24年度で、それ以前に作られたホームページ等は、原則としてウェブアクセシビリティに対応していません。それ以降に作成されたホームページ等も、ガイドラインを利用できていないケースが多くあることが分かりました。
アライド:この照会で、初めて市のガイドラインの存在を知ったという所管課もあったかもしれませんね。
遠藤:あったと思います。照会をかけた際に、総務省のガイドラインにおいて対応が求められていること、2017年度の期限に向けて予算措置も含めて必要となる対応を検討することを呼びかけました。
3.ウェブアクセシビリティについて各所管課に情報をきちんと伝える
アライド:どの自治体等でも似たようなことが必要となる可能性が高いと思うのですが、アドバイスできることがありますか。
遠藤:川崎市のシティプロモーション推進室の場合は、「国からの情報を提供するという立場」に徹することにしました。現実問題として、外部サイトの取組の推進役を担えるわけではないのですが、総務省のガイドラインの存在をほとんどの外部サイト担当者が知らないという現状を踏まえて、まずは情報をきちんと伝えるということを行い、どうしたらよいか分からないことがある場合は一緒に考えていきましょうというスタンスで挑みました。シティプロモーション推進室から情報を提供しなければ、多くの所管課で対応できるとかできないということを判断する状態にすらいたらなかったのではないかと思います。
アライド:他の自治体等では、取組の対象とする範囲の設定で迷われている場合もあるようです。川崎市ではどのように判断したのでしょうか。
遠藤:川崎市では、総務省のガイドラインの示している内容を伝えた上で、該当するしないの判断は所管課に委ねました。その結果、100を超える外部サイトの情報が寄せられました。平成29年度も調査の継続を予定していますが、その際にあらためて総務省のガイドラインの文章を示して、判断に誤りがなかったか、漏れがなかったかを照会することになると思います。
アライド:外部サイトに関する照会はいつ実施されましたか?
遠藤:予算措置が関わる可能性のある話だったので、6月に照会をかけました。6月の調査の段階でウェブアクセシビリティ方針を作って運用している外部サイトは、100件のうち1件だけでした。それも市が求めたのではなく、たまたま構築を支援した業者が提案してウェブアクセシビリティ方針を設けたという経緯のようです。それ以外の外部サイトではウェブアクセシビリティ方針は公開しておらず、対応基準書も遵守させていないというケースが多いという状況でした。