公共機関ウェブサイト、5つの重大課題+1~自治体ウェブサイトの84%がCMS導入効果を得ていない~
[ 2018年9月21日 ]
執筆担当
目次 徹也
(めつぎ てつや)
1.5つの重大課題+1
アライド・ブレインズは、府省庁、独立行政法人、特別民間法人、自治体(都道府県、市、特別区)を対象に2006年から全ファイルを解析し、A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査として公表しています(注1)。また、自治体の皆様に2009年から隔年でウェブサイト運営に関する取組みや課題をアンケート形式で回答していただいております(注2)。
これらの調査結果の経年分析、及び2004年開始の「公共機関ウェブサイトの品質向上支援」(注3)で得られた知見から、公共機関ウェブサイトにおける重大課題は、以下の5つに絞られることが分かります。
1) ページ削減/PDF削減
2) リンク切れ解消/浮遊ファイル削除
3) 情報分類、サイト構造設計見直し
4) アクセシビリティJIS対応
5) CMS機能見直し
+1 コンテンツ設計見直し
さらに、既に課題となっているものの、取組みの優先度が少し低くなる課題として「コンテンツ設計見直し(コンテンツページ内の配置だけでなく、コンテンツの量や平易な文章にするなど)」があります。現時点で優先度は低いものの、モバイル重視の観点からは、すぐに喫緊の課題となると考え、+1の重大課題として位置づけます。
2.公共機関ウェブサイトの品質実態
公共機関ウェブサイトの品質実態はどのような状況でしょうか。A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査結果とウェブサイト運営に関するアンケート調査結果を併せて分析したところ、2018年の自治体の状況は、CMS導入しているウェブサイトの約84%がCMS導入効果を得ていないという結果になりました。A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査開始を開始した2006年は、CMS導入しているウェブサイトの95%超がCMS導入効果を得ていなかった状況から毎年導入効果の数字は改善しているものの、未だ84%の自治体ウェブサイトがCMS導入効果を得ていません。これは、府省庁や独立行政法人など他の公共機関でも同様の状況が散見されます。
では、どうして公共機関ウェブサイトは、CMSを導入しても品質が向上しないのでしょうか。先に掲げた1)~5)の公共機関ウェブサイトにおける5つの重大課題について、十分な検討が行われていないあるいは不十分であることが最大の要因と思われます。
3.5つの重大課題に対応する実施計画
アライド・ブレインズでは、これら5つの重大課題と+1の課題について、遅くともCMS導入あるいは入れ替え導入(ウェブサイトリニューアル)を実施する1年前に課題への取組を実施し完了することを提案しています。5つの重大課題の中には、ウェブサイトの状況によって2か年から3か年かかるものがあります。したがって、5つの重大課題に対応する期間がどの程度必要かを見極める作業を、ウェブサイトリニューアル開始の3年以上前に行うことが必要です。また、5つの重大課題への対応において、各コンテンツページを所管している部署の職員に判断を求めなければならない項目は、決して少なくありません。どの課題を誰がいつどのように対応していくのか、その実施計画が必要でかつとても重要になります。
アライド・ブレインズは、2004年以来5つの重大課題+1への対応実施計画立案を支援するとともに課題への具体的な対応支援を継続、強化しています。
「5つの重大課題+1」の各項目について、別途御説明の機会を設ける予定です。
(注)
(注1)アライド・ブレインズが独自に開発したウェブサイトの品質解析プログラム「CRONOS2(クロノス2)」を用いて公共機関サイトの全ファイル解析を行い、アクセシビリティおよびユーザビリティの観点から、サイトの品質を9段階で評価し結果を公表しています。
(注2)ホームページ運営に関する自治体の皆様の取組みや課題について、最新の状況をお聞かせいただき、皆様と共有させていただくため、2009年より隔年で「公共機関ウェブサイトの運営に関するアンケート」調査として実施しています。
(注3)2004年から公共機関に特化したウェブサイト品質向上支援を継続して行っています。これまで、リニューアル事前準備、リニューアル事業者選定、リニューアルプロジェクト支援、アクセシビリティ検証、JIS試験、アクセシビリティ研修などを中心に、およそ480件の支援をさせていただいております。