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特別コラム
間違いだらけのアクセシビリティ対応(1) ~ 正しい対応方法について解説~

[ 2019年4月26日 ]

執筆担当
目次 徹也
(めつぎ てつや)


総務省は、2016年4月の障害者差別解消法施行を踏まえ、同年同月に、公共機関ホームページ等にウェブアクセシビリティ対応を求める「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」を公表し、2016年度から2018年度にかけて、全国で公共機関向けの講習会を開催しました。

ガイドラインは、公共機関が運営する全てのホームページ等を対象として、速やかに日本工業規格JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAに準拠することを求めています。
このウェブアクセシビリティ対応は、国際規格に沿って取り組まれており、日本では2004年にJIS X 8341-3:2004が制定され、公共機関を中心に対応が求められてきました。

2004年のJIS X 8341-3:2004の制定以降十数年経過する間に、適切な取組を継続的に実践し、目覚ましい成果を挙げてきた団体が存在する一方で、未だに多くのページに問題を抱え、その改善が喫緊の課題となっている団体があります。成果を上げている団体と、未だに多数の問題を抱える団体との差は、何が原因で生じているのでしょうか。
これまでに実施した数多くのホームページ改善コンサルティングの経験を踏まえ、適切な対応を計画するために不可欠となる考え方をご説明します。

1.未だに多いアクセシビリティ対応方法の間違った考え

(1) ページ作成時の対応に関する間違い

1) CMSの機能で確認できることの限界

現在、公共機関ホームページの多くはCMS(Contents Management System)で管理されています。多くのCMSがアクセシビリティチェック機能を実装していることから、「CMSを導入しているからアクセシビリティ対応は出来ている」という意見を聞くことがあります。
しかし、残念ながら機械的に明確に問題点を確認することが出来るのは、アクセシビリティJIS(JIS X8341-3:2016)で対応を求めている項目の3割程度に止まります。総務省のホームページから無償でダウンロードして使用できる「みんなのアクセシビリティ評価ツール:miChecker (エムアイチェッカー)」を使ってみていただけるとご理解いただけると思います。 

ここで理解していただく大切なことは、CMSを導入しただけではアクセシビリティに関する品質を確保することが困難であるということです。

2) テンプレート(ページ作成用ひな形)を使っていても問題発生

CMSで管理されている場合であっても、CMSを導入していない場合でも、テンプレートは、多くのホームページ作成場面で使われています。テンプレートを活用することによってアクセシビリティに対応することが出来るという意見がありますが、二つの注意すべき点があります。

第一に、テンプレート自体が完璧にアクセシビリティに対応していなければならないという点です。テンプレートに問題があれば、そのテンプレートを活用して作成されたページのすべてに問題が存在することになります。見栄えの調整用に配置された画像に代替テキストが用意されていないといった問題は、現在でも見かけることの一つです。

第二に、テンプレートとは言ってもそのどこかにある程度の自由度を持たせた編集領域があることが多く、そこで作成されたコンテンツについてアクセシビリティ対応を考えなければいけません。但し、1)で説明したとおり、CMSの機能を用いて確認するだけでは十分ではありません。
テンプレートを活用しただけでは、アクセシビリティに対応していると言い切ることは出来ないということを理解してください。

(2) 既にある問題をまとめて改善

現時点でアクセシビリティ方針を公開している団体の多くは、対象ウェブサイトのアクセシビリティ達成基準をレベルAA準拠、或いはレベルAA一部準拠に設定しています。しかし、実際に対象ウェブサイトのすべてのページについてこれらの目標を達成しているところは、限られています。そこでアクセシビリティ方針を実現するために多くの団体がウェブサイトのリニューアルの際にまとめて対応しようと考えます。

ここでも多くの間違った考えが大勢を占めています。代表的な二つの間違った考えについて説明します。

1) リニューアル期間だけでは、対応が困難

既に全ページについてアクセシビリティ対応を実施している団体除き、殆どの団体がウェブサイトリニューアルの際にアクセシビリティ対応を計画します。このように表現したのは、私の知る限り全ページについてアクセシビリティ対応を実施している団体は、リニューアル時に行ってはいないと言うことです。

リニューアルの実施期間は、1年以内と設定されることが多いと思います。この期間内では対応が困難であるということです。但し、数百ページといった規模であれば実現の可能性が出てきます。1,000ページを超えるウェブサイトでアクセシビリティの問題を有する場合、最初に行わなければならないのは、問題の特定です。どこにどの様な問題が存在しているかを確認する作業になりますが、既に説明したとおり、CMS、miCheckerを用いただけでは不十分です。まずここで多くの工数を割くことになります。次に明らかになった問題について一つ一つ対応方法を決めて行かなければなりません。アクセシビリティ対応を検討された方は、活用されたことがあると思いますが、ウェブアクセシビリティ基盤委員会が公開している「WCAG2.0達成方法集」や関連したいくつかの対応方法を記述した文書(詳しくは「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を参照)を確認しながら一つ一つ対応方法を決めて行く必要があります。そして、決定した対応方法に従って多くの場合が、手作業による対応になります。手作業になることから、作業結果について検証する工数も漏れなく行わなければなりません。

上記の作業を1年という期間の中で実施することは現実的ではないということです。

2) リニューアル事業者だけで対応はできない

リニューアル期間の中で対応出来ない理由として、そもそもリニューアル事業者だけでは対応が困難だということがあります。この点について、殆どの団体で正しい理解が出来ていません。例えば、アクセシビリティJISの最初の項目であり、最も実施しやすい対応である代替テキスト付与について、リニューアル事業者だけで対応することが困難であることは説明するまでもないと思います。仮にリニューアル事業者に対応してもらうことを計画する場合でも、団体職員側の準備がなければ何の作業も進められないことを確認して下さい。

上記の例は、アクセシビリティの中でも比較的簡単な対応項目です。アクセシビリティ方針として、対応目標レベルをAA準拠とした場合、レベルA25項目、AA13項目の併せて38項目、その中の多くの項目について団体の職員側で決めなければならない事項が存在します。

最も典型的な例を紹介します。リニューアルの仕様書に「アクセシビリティについては、AA準拠を実現すること」と一文記述するだけで、後はすべてリニューアル事業者任せという例です。実に多くのリニューアル案件の要求仕様がこの様な記述です。リニューアルを実施しても実際にはすべての対象ページについてAA準拠どころかA準拠さえ出来ていない実態は、間違った理解によるところが最大の原因と言って良いでしょう。

ここまで、「アクセシビリティ対応方法の間違った考え」をご説明しました。それでは、どの様に対応すればすべてのページについてアクセシビリティ対応を実現することが出来るのでしょうか。
以下のセミナーにおいて、具体的な方法について他団体の実践事例を踏まえて詳細にご説明します。特にこれから取組に着手したいと考えている団体の方、問題が山積しているおそれのある団体の方、取組に着手しているものの改善が思うように進まない団体の方々は、この機会を逃さずに、ぜひご参加ください。

上記コラムに関連する詳細解説セミナー(新年度前半開催予定)

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