推薦文「A-COMPASS アクセシブルなウェブ作成を助ける羅針盤」
石川 准 先生 （静岡県立大学 国際関係学部 教授）
社会学者としてアイデンティティ論や障害学の分野で活躍されている一方で、自動点訳プログラムやスクリーンリーダーの開発を行うなど情報アクセシビリティ分野のリーダーでもある石川准先生から、A-COMPASSを推薦するコメントをいただきました。
JIS発効で求められるアクセシブルなウェブ作成
2004年6月20日、ウェブコンテンツのアクセシビリティ・ガイドラインがJISの規格として発効した。いまや遅しと待ちかねていたが、ようやく日本でも「ウェブアクセシビリティ」の幕開けである。障害者や高齢者などのユーザの期待はとても大きい。
対照的に、サイト製作者は、アクセシビリティの実現に頭を痛めているだろう。ウェブコンテンツのアクセシビリティ・ガイドラインがJISとして発効したことで、サイト製作者はいやおうなくアクセシブルなページを作ることが求められるようになる。しかし、突然アクセシブルなページを作れといわれても当惑するにちがいない。
そもそも「アクセシブルなページとはなんなのだ」という疑問がすぐにわいてくるだろう。その次には「どうしたらアクセシブルなページになるのだ」という疑問が、さらには「こんなサイトにしたいのだけれど、どのようなHTMLやスタイルシートを書けばデザインとアクセシビリティの両立は可能なのだろう」という疑問がわいてくると思われる。そしてアクセシビリティの実現は技術的にも労力の面でも容易でないのではという疑念がわいてくる。あげくは、時間と労力をかけても、実際にそのような機能を必要としている人はどのくらいいるのだろう、という疑問も膨らんでくるかもしれない。
だが、そもそもアクセシビリティを確保することはそれほど難しくはない。正しく考え、戦略的に積み上げていけば、それほど労力を使うことなく実現できる。アクセシブルなサイトを構築するためのHTMLやスタイルシートの書き方も、ちゃんとしたサンプルや解説さえあればそれほど難しいものではない。
サイト制作者の悩みを解決する『A-COMPASS』
そんな折しも、アライド・ブレインズ株式会社より、『A-COPASS』が発売された。これまでウェブサイト製作者は、どのようにアクセシビリティを確保するかについて常に悩んできた。どのようなデザインにすればアクセシブルなサイトになるのか、どのようなコーディングをすればデザイン性とアクセシビリティが共存できるのかなど、考えなければならないことは多い。
このソフトは、このようなサイト製作者の悩みを解決するために開発された。多くのサンプルと、実際の利用者の声を知ることができる。サイト製作者にとってこのようなまとまった情報はたいへん貴重である。
『A-COMPASS』は「アクセシブルなウェブサイト構築への羅針盤」というコンセプトの下に開発されたリソースパッケージである。このソフトは、今まで思いはあっても孤独に悩んできた人たちに、解決の方向を指し示してくれるだろう。
『A-COMPASS』には、豊富なサイトのサンプルが含まれている。このサンプルはそのまま利用できるように設計されており、それを利用するだけでアクセシブルなページにすることができる。どのように設計すれば良いのかを知るのにはたいへん役にたつ。それぞれのページを構成するパーツを組み合わせることで、簡単にアクセシブルなページを作成することができる。
このソフトの大きな特徴は、先に紹介したサンプルにアクセスした障害者・高齢者の感想を知ることができることである。サイト製作者は、自分が作ったサイトがどのくらい使いやすくなったかについて、ユーザの声を聞きたいと思うにちがいない。しかし、思うほどにはそのような声を聞く機会は得られないかもしれない。このソフトに含まれている利用者の声はかならずや製作者を力づけることだろう。
そして、「どのようにHTMLやスタイルシートを書くのだろう」という悩みも、このソフトに含まれているサンプルのソースコードを見ることで解決できる。また、詳細な解説書も付属し、それに沿って正しい技法を習得することができる。
頼れる羅針盤『A-COMPASS』
このソフトの出現で、多くのウェブサイトがアクセシビリティ機能を実装することができるだろう。また、このソフトを使ったユーザーからのフィードバックも出てくると思われる。これまでは、このようにアクセシビリティに特化した素材集がなかったので、せっかくサイト製作者が悩んで見つけた技法もシェアされることはなかった。今後もインターネットとウェブの発展とともに新手の解決すべき問題が出てくるだろう。
『A-COMPASS』が新しい課題にも即応しながら進化し、多くのウェブサイトの頼れる羅針盤となることによって、インターネットの大海原の旅が穏やかなものになることを、私たち船客は望んでいる。
- 石川 准 先生 （静岡県立大学 国際関係学部 教授）
- 石川先生サイト：「石川准：社会学とアシスティブ・テクノロジー」
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