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自治体におけるウェブコンテンツJIS対応に向けて

[ 2004年5月7日 ]

執筆担当
安藤 昌也(あんどう まさや)



ウェブのアクセシビリティを規定した日本工業規格(JIS)が2004年6月20日に発効予定です。今後、自治体のウェブサイトにおいても準拠が求められるJISへの対応策を、パブリックコメントとして公開されたJIS素案を基に考えます。

月刊e・Gov 2004年4月号掲載】

アクセシビリティ対応が進んでいない自治体のウェブサイト

2001年3月、政府が発表したe-Japan重点計画では、情報バリアフリーがIT政策の重要課題のひとつとして取り上げられました。これを受け総務省は、平成13年度から「ウェブアクセシビリティ実証実験」を実施するとともに、ウェブのアクセシビリティを点検するシステム、「ウェブヘルパー」を開発しました。総務省は、全国の自治体にウェブヘルパーを配布し、自治体でのウェブアクセシビリティの確保を促しました。

しかし、2003年2月に総務省が実施したアンケートによると、73%が「アクセシビリティ配慮は今後の課題」としており、対応が進んでいない自治体が大半なのが現状です。

グラフ1 :地方自治体のウェブアクセシビリティの対応状況
グラフ1グラフ1 拡大と説明

【出所:総務省「地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ向上の取り組みに関する調査」】

公共分野のウェブをターゲットにしたアクセシビリティJISの発効

先ごろウェブアクセシビリティを規定した日本工業規格が、2004年6月に発効することが決まりました。正式名称は、「JIS X8341 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信機器・ソフトウェア・サービス:第3部ウェブコンテンツ」です。

この規格は広く一般のウェブサイトを対象にした規格ですが、規格の記述には 「この規格の第一義的対象領域は、公共分野である」とターゲットが明記してあります。つまり、政府や自治体など公共性の高いウェブサイトは、いち早くウェブコンテンツJISに対応することが望まれていることになります。

ウェブコンテンツJISの枠組みと特徴

ウェブコンテンツJISは、高齢者・障害者等が、ウェブコンテンツを利用する際のアクセシビリティを確保・向上させるために、ウェブコンテンツを企画・設計・開発・制作・保守・運用する際に配慮すべき事項を規定しています。その内容は大きく3つのパートに分かれています。

  1. 一般的原則・・・配慮すべきウェブ利用者の特性・状態を挙げ、なるべく一つのコンテンツで多様な利用者に対処するよう、努力すること。
  2. 開発・制作に関する個別要件・・・具体的に、ウェブコンテンツを制作する際に配慮すべき事柄およびその技術。(WCAG等のガイドラインに対応した内容)
  3. アクセシビリティ確保・向上に関する全般的要件・・・ウェブコンテンツのアクセシビリティを実現し、その品質を保持するために企画・制作者が取るべき施策。(JIS独自の要件)

この規格の基本ポリシーは、「ひとつのコンテンツで多様な利用者に対処するための技術的な基準を示す」ことにあります。障害者や高齢者向けのページを新たに設けるのではなく、可能な限り多くの利用者が利用できるコンテンツを制作する努力が求められています。

具体的なアクセシビリティ確保の技術については、ウェブアクセシビリティ・ガイドラインの世界的なデファクトスタンダードである、WAIのWCAG1.0にほぼ対応しています。加えてウェブコンテンツJISでは、日本語環境を勘案しWCAG1.0にはない独自の項目(9項目)を設けています。

ウェブコンテンツJISの最大の特徴は、3つめのパートにあります。WCAG等他のガイドラインでは明示していない、企画段階、保守・運用段階での要件が規定されています。ウェブアクセシビリティの検証の必要性や、利用者からの問い合わせ、フィードバックを受け付ける体制についても言及されており、JISに対応するためにはこうした運用面を含んだ体制作りが必須になってきます。

自治体で取り組むべき事柄

自治体のウェブサイトには、アクセシビリティの基本的な知識がないために、問題点を放置したまま提供されているケースがよくあります。例えば、PDFファイルでしか情報が取得できない文書はその典型です。自治体がウェブコンテンツJISに対応する第一歩として、まずはすべての職員が障害者や高齢者のウェブ利用を考え、アクセシビリティの理解を深めることが重要です。

次いで重要なのが、JISの3つめのパートで示されたように、組織として「アクセシビリティ品質」を確保するための、アクセシビリティの確保方針や内部手順(プロセスガイドライン)の明確化の作業です。それには、市民からフィードバックを受け付ける運用体制についても検討する必要があるでしょう。

ウェブアクセシビリティを前向きにとらえ、市民と対話しながらアクセシビリティ品質を向上させる体制づくりこそが、自治体におけるJIS対応の要であるといえるでしょう。

脚注:JIS規格発効予定について
本稿を月刊e・Gov2004年4月号に寄稿した時点では、2004年5月中の発効予定とされていましたが、現時点では6月20日の発効が目指されています。

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