- データで診る自治体サイト -
No.6 情報の探しやすさとリンク階層
[ 2007年3月16日 ]
執筆担当
目次 徹也
(めつぎ てつや)
情報を探しやすいサイト
ウェブサイトで提供する情報内容の良し悪しやデザインの新鮮さだけでなく、情報が探しやすいサイトかどうかという観点が重視されるようになりました。サイト担当者の方にとっても気になる問題ではないでしょうか。
情報が探しやすいかそうでないかは、一つの決まった方程式により決まるわけではなく、利用者の印象に大きな影響を与える要素が複数あります。たとえば、提供される情報やサービスの内容、情報量、分類、ナビゲーションの仕組み、配置、文字の大きさ色使いのようなデザインなどが挙げられます。
今回のコラムでは、重要な要素の一つである「リンク階層」について、「2006年自治体サイト全ページアクセシビリティ実態調査」の結果を基に考えてみましょう。
リンク階層の深さとページ数の分布
調査で使用したウェブサイト解析プログラムCRONOS2では、サイト内各ページについて、トップページから最短で何クリック目に到達できるかという情報を収集しています。
トップページから情報を探す場合に、3クリックや4クリックくらいで目的とした情報にたどり着けた場合と、10クリックや15クリックしてたどり着けた場合とでは、利用者の印象が大きく異なりそうだということはイメージしていただけるでしょう。利用者の中には、15クリックをする前に「見つからない」と感じて情報を探すのをあきらめてしまう人も入るかもしれません。
「2006年自治体サイト全ページアクセシビリティ実態調査」では、180の自治体サイトについてアクセシビリティを中心にした調査を行いましたが、アライド・ブレインズでは、各サイトのリンク階層の深さとページ数の分布についても分析を進めています。
代表的なふたつのパターン
調査結果のうち代表的なパターンをふたつご紹介します。
パターン1
トップページからのリンクの3階層、4階層、5階層あたりに、ページ数の分布のピークがあり、それより深い階層のページ数は極端に減少しているというパターンです。このようなサイトでは、多くの情報に3クリック~5クリック程度で到達可能だと想定されます。
パターン1のグラフ
パターン2
トップページからのリンクの4階層あたりにページ数の分布のピークがあるものの、それより深い7階層、8階層あたりまでピークからのページ数減少が緩やかで多くのページが存在するというパターンです。9階層目あたりからページ数が減少しますが、このようなパターンのサイトでは、20階層あるいは30階層といった非常に深い階層にもページが存在することが多いのが特徴です。20クリック、30クリックしないとたどり着けない場合、利用者によってはそのことが原因で情報を発見できないかもしれません。
パターン2のグラフ
サイト構造の検討についてサイト全体を対象に行えているか
両パターンの差は何が原因で生じているのでしょうか。各パターンに当てはまるサイトの内容を実際に確認してみるとよく分かります。
パターン1は、情報の分類や階層設定、ナビゲーションの仕組みといったサイト構造について、サイト全体を対象に検討がなされていると見受けられます。さらに、見た目などからの印象としては、比較的最近にこれらの検討を行ったものと推察されます。
パターン2は、サイト構造の検討がサイト全体を対象には行えていないと見受けられます。トップページのメニューなど上層の構成は整理されている場合もあるのですが、サイトの下層におりていくと、情報が整理されていません。おそらくは、相当以前に構築されたサイトであり、サイト構造の見直しを行わないまま、長年にわたり無造作にページ追加やサイト内サイトの追加を行い、現在に至っているものと推察されます。
ちなみに、両パターンにはCMS(コンテンツマネジメントシステム)の有無による傾向は確認できません。CMS導入していてもパターン2のケースは多々あるということです。つまり、システム導入の有無による違いではなく、サイト構造の検討をサイト全体を対象にきちんと行えているかといった違いだと考えられます。
リンク階層が浅ければ良いというものではない
パターン1を実現するためには、運営の方針に基づいてサイト構造が検討され、その構造に従った情報追加を行っていくことが必要です。そのように構築・運用されているサイトは、結果的にリンク階層も一定の範囲に収まり、比較的少ないクリック数で多くの情報にたどり着けるようになると考えられます。
ページの追加や、サイト内サイトの開設は、都度必要に応じて行われるものです。サイトの下層に無秩序に情報が追加される状況が続くと、パターン2のようなページ分布となり、サイト担当者ですら「どこにどのような情報があるのか」「どこをたどったらその情報に行き着けるか」といったことが分からないというサイトになってしまいます。
ここで注意が必要なのは、単純にリンク階層を浅くすれば良いという話ではないということです。情報の分類などサイト構造の適切な検討なしに、リンク階層を減らそうとすることだけにとらわれると、上層のメニューページ内に20も30もだらだらとリンクが並ぶ、情報を探しにくいサイトになってしまいます。
また、情報量の増加が激しいサイトでは、数年もすると、過去に検討したサイト構造を維持するのが難しくなります。提供される情報のバランスが変わったり、利用者の必要とする情報の種類が変わったりするためです。少なくとも2~3年程度に1回を目安に、サイトで提供しているコンテンツの棚卸しとサイト構造の再構築をお勧めします。
A.A.O.では、「多くの利用者が快適に利用でき、目的をきちんと達成できるホームページを目指していただきたい。その中でアクセシビリティを漏らさずに実施いただきたい」という立場から情報発信や、個別事例の様々なご支援をしています。総合的な観点からサイト改善を考えていただくひとつの視点として、今回は「リンク階層」をテーマにご紹介しました。
このコラムは最終回となりますが、A.A.O.では引き続き様々な新企画を用意し、皆様のお役に立つ情報発信をしていきたいと考えています。また、自治体など公共機関のホームページの実態調査については、今年度も計画しています。詳細が確定次第、A.A.O.にて告知予定です。
【ご参考】
サイト構造(IA)/ユーザビリティ診断(アライド・ブレインズ)
メニューカテゴリの再設計(アライド・ブレインズ)
- ウェブサイト解析プログラムCRONOS2
- 「2006年自治体サイト全ページアクセシビリティ実態調査」に使用したCRONOS2は、サイト内の全ページを解析し、アクセシビリティをはじめとするサイト内の様々な問題を統計的に明らかにします。
- 利用者に公開されている全ページについて、問題の有無を確認できます。
- リンク階層別に、ファイル数の分布を確認できます。
- リンク階層別に、アクセシビリティなどの問題のあるページ数を確認できます。
- 2006年自治体サイト全ページアクセシビリティ実態調査
- アライド・ブレインズでは、平成18年8月から10月にかけ全国約180自治体のホームページを対象に実施。調査概要と結果の詳細は、ウェブアクセシビリティ実用サイト「A.A.O.」で紹介している。