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第8回A.A.O.セミナー講師 特別コラム
No.1 間違いだらけの音声読み上げ対応

[ 2008年5月22日 ]

執筆担当
伊敷 政英
(いしき まさひで)



まずは筆者について簡単に

このコラムを書いている私自身、強度の弱視です。2度の角膜移植とその後の治療を経て、今の視力は右0.02、左0.01です。角膜移植前や治療中の様子については、コラム「弱視にまつわるエトセトラ」をご一読いただければと思います。

以前は画面拡大ソフトを使ってパソコンやウェブを利用していましたが、現在は音声読み上げソフトを使っています。音声でウェブサイトを閲覧して情報収集したり、エクセルで資料を作ったりしています。このコラムも音声で文章や漢字などを確認しながら書いています。このスタイルになって半年ほどですが、漢字の変換を間違えたり、突然音声が止まってあわてたりなど、日々修行中です。

音声で自治体や公共機関のウェブサイトを見ていると、「アクセシビリティ」や「音声読み上げ対応」などの言葉をよく耳にします。この仕事を始めた2000年ごろと比べると雲泥の差があると思います。多くの自治体や公共機関でアクセシビリティポリシーが作成されたり、音声に配慮したページ作りが行われるなど取り組みが進んでいます。
しかし大変残念なことに、これらの取り組みの中には、音声読み上げソフトやそのユーザーである視覚障害者に対する誤解に基づいているものや、取り組みが不十分なままになってしまっているものが見受けられます。

いくつか例をあげてご紹介します。

「音声読み上げ対応」は「画像を使わないこと」ではない

これはアクセシビリティという言葉が登場した当時から言われていることなのですが、「音声読み上げソフトに対応する」ことと「画像をなるべく使わないで、テキスト中心のウェブサイトにする」ことはまったく別のことです。

画像を使ってデザインしたウェブサイトでも、きちんと音声読み上げに対応していれば音声ユーザーにとって使いやすいものになります。
例えば、音声読み上げソフトのユーザーにとって地図画像はとても有益な情報です。一人で外出する際、地図画像を印刷して持っておけば道に迷っても人に聴くことができます。私も外出するときは必ず地図を印刷して持ち歩いています。

また、画像をふんだんに使ってデザインしたウェブサイトと、画像を使っていないテキスト中心のウェブサイトを両方作っているケースも見られますが、これは作成後の更新が大変になります。情報の同期が取れなくなってしまい、テキスト中心のウェブサイトに古い情報が掲載されたままになってしまう恐れもあります。

画像を使うこと自体は、音声読み上げへの対応上問題になることはありません。適切な代替情報を提供していれば、むしろプラスに働くことのほうが多いといえます。

目的地までたどり着ける地図情報を

上で地図画像についてお話しましたが、もう少し触れておきたいことがあります。
ある会議へ出席するため一人で会場へ向かっていたときのことです。以前にも行ったことのある場所だったのですが記憶があいまいになっていたのか道に迷ってしまい、通りすがりの人に地図を見せて道を尋ねました。しかしその人は周辺の地理に詳しくない方でした。地図を見ながら目的地までの行きかたを探していただいたのですが、結局たどり着けず、途中で見つけた交番で改めて道を聞いてなんとか会議に間に合うように会場へ着くことができました。警察官の方に地図を見せたところ「この地図じゃわかんないね」とおっしゃっていました。
現在多くのウェブサイトで掲載されている地図情報は情報が不十分です。目的地周辺の地図画像と「~駅から徒歩5分」のような情報だけでは、音声ユーザーが目的地へたどり着くことは難しいでしょう。

また、Googleマップなどの地図検索サービスを利用しているケースも増えてきました。こういった便利なサービスを利用してウェブサイトの利便性を向上させようとすることはすばらしいことですが、そのサービスを利用できない人々がいることも忘れてはいけません。実際、音声ユーザーはGoogleマップを利用することはできません。そのため、目的地周辺の地図画像に加えて、最寄り駅からの道順や目印となりそうな建物、電話番号、住所などの情報をテキストで提供することが大切です。

視覚障害者はウェブサイト独自の音声読み上げ機能を使わない

多くの自治体サイトで導入が進んでいる「音声読み上げ機能」。マウスでクリックした箇所を音声で読み上げるものや、ページの内容をすべて読み上げるものなどさまざまです。しかし、音声ユーザーはこの機能をほとんど使いません。その理由は以下の2つです。

  • すでに音声読み上げソフトを持っている
    音声ユーザーはすでに音声読み上げソフトを持っており、読み上げの速度や声色などを自分好みに変更して、自治体や公共機関のウェブサイトを閲覧しています。そのため、特定のウェブサイトを閲覧するためだけに、使い慣れた音声読み上げソフトを一度停止して、そのサイト独自の読み上げ機能を利用することはありません。
  • 音声ユーザーの多くはマウスを使用できない
    音声読み上げ機能の中には、マウスでクリックした箇所の文章を読み上げるものがありますが、音声ユーザーの多くは視覚に何らかの障害を持っているため、マウスを操作してパソコンを使うことはできません。すべての操作をキーボードで行っています。そのため、このような音声読み上げ機能を視覚障害者が利用することはできません。

音声読み上げソフトに対応する、あるいは音声読み上げソフトの利用者に配慮するということは、ウェブサイト独自の読み上げ機能を導入することではなく、ウェブサイトそのもの、それぞれのウェブページ、1つ1つのコンテンツをアクセシブルにすることなのです。

音声で使いやすいウェブサイトは誰にとっても使いやすい

音声に対応したウェブサイトは、音声を利用しないユーザーにとっても大変使いやすいものになります。
例えば先ほどの地図の例では、目的地周辺の地図画像に加えて、最寄り駅からのおおまかな道順や目印となりそうな建物、電話番号や住所などの情報があれば、視覚障害者だけでなく、初めてその地を訪れる人にもとても有益な情報となるでしょう。

このように、現在の音声読み上げ対応には、利用者に対する誤解に基づいて行われているものや取り組みが不十分なものがあります。筆者自身このコラムを書いていて、「まだまだわれわれのメッセージを伝えきれていないな。もっとがんばらなきゃ」と反省しているところです。第8回A.A.O.セミナーでは、まず視覚障害者や音声読み上げソフトについての正しい知識をご紹介したうえで、音声読み上げソフトに対応するとは具体的にどういうことなのか、また音声に対応することでどういう利点があるのかについて、ご理解いただけるようなお話をしたいと思います。

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