わたしとWebとパソコンと
No.4 視覚障害者の社会参加で(中編)
[ 2008年9月18日 ]
インタビュアー
岩渕正樹さん
(いわぶち まさき)
宇佐美昭治さん
(うさみ しょうじ)
前回に続いて、宇佐美昭治さんのインタビューを紹介します。(前回のインタビューを読む)
地域にかかわりたいと「アイネット」
岩渕:宇佐美さんが次に取り組んだのは、鶴ヶ島視覚障害者の会「アイネット」の設立だと思っていましたが、あっているでしょうか?
宇佐美:そうですね。
岩渕:視覚障害者の会の構想は前からあったのでしょうか?
宇佐美:退職後、地域にかかわりたいということで、退職の2~3年前から考えていました。
岩渕:アイネットはどのような会なのか、簡単にご紹介ください。
宇佐美:私たちは、視覚障害者の福祉と生活の向上を目的に会の運営をしております。「視覚障害者が安心して生活し安全に行動できる鶴ヶ島市」を目指して活動しています。障害者が住みやすい街は、必ず市民の皆さんにも住みやすい街になると信じています。
岩渕:会員は何人くらいでしょうか?
宇佐美:視覚障害者が20名くらいで、健常者が20名くらいです。
岩渕:鶴ヶ島市の視覚障害者は何人くらいいるのでしょうか?
宇佐美:市内で100名います。
岩渕:20%を組織しているということですね。
宇佐美:そうなります。
岩渕:けっこう高い組織率だと思いますが、どうでしょう。
宇佐美:決して高いとは思いません。その理由は、80%の人に連絡できない。存在が分からない状態だからです。
岩渕:連絡ができないというのは?
宇佐美:公的な、たとえば公的機関が持っている情報は、個人情報の関係で知らせてもらえないので、働きかけができません。
岩渕:坂戸でもそうですね。坂戸パソボラが「視覚障害者のためのパソコン体験講座」を開催するにしても、視覚障害者の団体に講座があることを伝えてくれるよう市役所の担当者に依頼はできますが、自分たちで知らせることができないでいます。
パソコン率は75%
岩渕:話を戻しまして、それでも某市に比べると鶴ヶ島はけっこう高い組織率だと思いますが、アイネットの中でのパソコン率はどうでしょうか?
宇佐美:70歳以下のほとんどのかたはできます。
岩渕:パーセントでいうと?
宇佐美:20人中できないのは5名ですので、75%です。
岩渕:75%なら、高いと思っていいでしょうか?
宇佐美:これは高いと思います。
岩渕:パソコンを使っている皆さんが集まってきたのでしょうか?
宇佐美:いえ、会を立ち上げたときには、パソコンを使っていたのは5名でした。
岩渕:そうでしたね。知っていましたが読者の皆様に代わって聞いてみました (笑)
宇佐美:(笑)
岩渕:このパソコン率は、視覚障害者の会の中ではけっこう高いほうだと思いますが、パソコン率が高くなったのは、会員さんからの声で? それとも、宇佐美さんからの意識的な働きかけの結果としてでしょうか?
宇佐美:ほとんど私のほうからの押し付けで (笑)
最初のころの反応は?
岩渕:パソコンを学びましょうと働きかけたのは、どのような思いからだったのでしょうか?
宇佐美:これからはパソコンが情報に欠くことのできない道具だと思ったからです。
岩渕:なるほど。最初のころの皆さんの反応はいかがでしたか?
宇佐美:正直いって、皆さん、自信がなさそうで、不安そうでした。でも、キーボードを叩いているうちに、なんとなくできるんじゃないかと思うようになってきました。
その中で、音楽を聴きたいという人もいて、その人が興味をもってもらえるものから始めるよう工夫しました。
岩渕:確か私がアイネットのかたのサポートに行ったとき、音楽CDの聴き方の話が出たように思います。坂戸パソボラの講座のテキストの中でも、パソコンで音楽CDを聴くことができることを載せてありますが、そういったことも参加する人の思いとマッチしてたのですね。
ところで、けっこう前から、世の中「猫も杓子も」状態で「IT化」に突入している昨今ですが、視覚障害者の皆さんは、そのあたり、どのように感じていたのでしょうか?
宇佐美:まず私にはできないでしょうというのがありました。
でも、始める前はそうだったとしても、始めてからのことについてはひとつあります。これは推測ですが、パソコンを使うようになった視覚障害者は、パソコンを通して子どもと対話できるようになっているのではないかと思うのですよ。パソコンをやっていると子どもに「ガンバッテね」と言われたというのを聞いて、パソコンという共通の話題でもって、コミュニケーションすることが増えているように感じます。
岩渕:だからこそ、地域のパソボラグループである坂戸パソボラも、地域の障害者団体であるアイネットさんに、ずっと協力し続けているわけです。
宇佐美:これからもよろしく。本当のことを言うと、このあたりで視覚障害者のパソコンボランティアをできる唯一の団体は、坂戸パソボラだと思います。
岩渕:と言いますと?
宇佐美:ひとつには、定期的なサポートの場を提供していること。ふたつには、視覚障害者に教えるに際して、「教えるノウハウ」を備えていること。そのための講座を毎年開催していることです。
岩渕:期待に応えて今後とも、ご一緒にパソコンのサポートを続けていきたいと思います。