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政党調査コラム 問題点ばかりではない、配慮の姿勢も見られる政党サイト

[ 2009年2月13日 ]

執筆担当
伊敷 政英
(いしき まさひで)



今回弊社で実施しました「第1回政党ウェブサイト全ページクオリティ実態調査」にあわせて、調査対象となった政党のうち日米の9つのウェブサイトを、音声読み上げソフトと画面拡大ソフトを用いて視覚障害者の視点で実際に閲覧してみました。

政党ウェブサイトの現状はどうなっているのでしょうか?

政党ウェブサイトの目的

政党がウェブサイトで情報発信を行う目的は「国民に対して党からのメッセージや活動内容を伝える」ことにほかなりません。しかしここで「国民」とひと言で言っても、一人ひとりの年齢やパソコンの習熟度、視力や聴覚などの身体の機能はさまざまです。高齢者や障害者が政党サイトを閲覧することもあるでしょう。こうした多様な国民に対して平等に、確実に情報を届けられるようなウェブサイト作りが必要になります。

一人でも多くの国民にメッセージを届けるために

では、より多くの国民に確実に情報を届けるためにはどのような配慮が必要なのでしょうか。筆者は以下の3つの配慮の視点が必要だと考えています。

  • 見やすいこと
  • 操作しやすいこと
  • 内容がわかりやすいこと

このコラムでは、上の3つの視点で政党サイトの現状を紹介していきます。

見やすさ

筆者は弱視の障害を持っています。今回確認したウェブサイトの多くで、「文字が小さい」と感じました。ウェブサイトを作る際、文字の大きさを意図的に小さく設定しているようですが、ご年配の利用者の中にも同じように感じている方がいるかもしれません。しかし、多くのサイトにおいて、ブラウザの機能で文字サイズを変更できるようになっていたため、筆者もこの機能を利用して文字を大きくして閲覧しました。

操作のしやすさ

ウェブサイトの操作のしやすさには、「リンクの選択のしやすさ」「ウェブサイトの使い方の習得のしやすさ」など、複数の視点があります。今回確認したウェブサイトにおいては、以下のような問題点が確認されました。

リンクへの配慮
利用者はウェブサイトを閲覧するとき、リンクをたどってサイト内を移動し、目的のページを探します。しかし今回、「画像リンクに代替テキストが付与されていないため、音声読み上げソフトの利用者がリンク先ページの内容を予測できない」「利用者に事前に知らせることなく新しいウィンドウが開くような仕組みが使われているため、音声読み上げソフトの利用者や高齢者、パソコン操作に不慣れな利用者などが混乱する可能性がある」などの問題点が見つかりました。
ナビゲーションへの配慮
今回、グローバルナビゲーションに、マウスポインタを乗せたときだけ表示されるメニューの仕組みが使われているウェブサイトを複数見つけました。このようなメニューの仕組みを使うと、音声読み上げソフトでは正確に読み上げられなかったり、メニュー内のリンクをうまく操作できないなどの問題が発生することがあります。さらに、このようなメニューを利用者が使いこなすには正確なマウス操作が必要になるため、高齢者や手が不自由な利用者にとっても使いにくいものとなる可能性があります。

また、問題点ばかりではなく、配慮の姿勢が見られる点もありました。

一貫性のあるページ作り
多くの政党ウェブサイトで、「各ページの左上には必ずトップページへ戻るリンクを配置する」「各ページ上部には共通してメニューを配置し、下部には共通してプライバシーポリシーやアクセス案内などへのリンクを配置する」など、一貫性のあるページ作りが行われていました。このようにウェブサイト全体での配置や表記、色などに一貫性があると、利用者はウェブサイトの使い方を習得しやすくなり、使い勝手が格段に向上します。そのため、利用者はウェブサイトの内容を理解することに集中できるようになるのです。
適切なページタイトル
複数のウェブサイトで、適切なページタイトルが付与されていました。ページタイトルとはブラウザの一番左上に表示されるもので、音声読み上げソフトでは最初に読み上げられます。そのため音声読み上げソフトの利用者は、そのページの内容を大まかに予測し、必要としている情報がそこにあるかどうかを判断する材料にしています。また、検索エンジンでの検索結果の表示にも用いられますので、そのページの内容を簡潔に表すようなタイトルをつけることには大きな意味があります。

内容のわかりやすさ

政党ウェブサイトには、党からのメッセージや国会提出法案の内容、党の最新動向などが掲載されています。これらのコンテンツをいかにわかりやすく掲載するかによって、国民に確実に情報を伝えられるかどうかが決まってきます。
どの政党も、動画やFlashなどの技術を用いたコンテンツを多く掲載して、動きのあるウェブサイトを目指しているようです。しかし、これらの技術を利用できない人がいることもしっかり認識する必要があります。
動画やFlashを用いたコンテンツを掲載する際には、次のような配慮が必要になります。

  • 動画やFlashを用いたコンテンツが提供している情報(国会審議の様子や党からのメッセージなど)と同等の内容をテキストでも併せて提供する
  • Windows Media PlayerやFlash Playerなど、コンテンツを利用するために必要なソフトウェアの入手方法を案内する

最後に

今回、視覚障害者の視点で政党ウェブサイトを利用してみて強く感じたことは「問題点ばかりではなく、国民に対してきちんと情報発信しようとする姿勢が見られるところもある」ということでした。一貫性のあるページ作りや、動画・Flashを用いたコンテンツの配信などは、こういった姿勢の表れではないかと思います。
こうした配慮の姿勢をもう一歩前に進めて、党からのメッセージを一人でも多くの国民に「確実に」伝えるためにも、アクセシビリティへの取り組みが重要になるといえます。
特に視覚障害者は、選挙公報や政党パンフレットなどの紙媒体の資料から情報を得ることができないため、ウェブサイトでの情報発信の意義はより大きくなります。
ウェブサイトを最大限に活用して、「みんなにわかりやすい政治」の実現にむけて前進していただきたいと思います。

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