連載「JIS X 8341-3改正動向と公共機関HPに必要な対応」
第1回「ウェブアクセシビリティの新国際基準」
[ 2024年3月11日 ]
執筆担当
大谷 昌也
(おおたに まさや)
本連載コラムでは、数年内に実施される見込みのウェブアクセシビリティのJIS規格改正の最新動向、総務省ガイドライン改訂など関連動向、JIS改正に向けて公共機関ホームページに求められる対応を、総務省ウェブアクセシビリティ推進事業の事務局を毎年担当しているアライド・ブレインズ株式会社のコンサルタントが解説いたします。
JISの一致規格であるWCAGの最新バージョンが2023年に勧告されました
「Web Content Accessibility Guidelines(略称:WCAG)」(以降WCAGと記載する)の最新バージョンであるWCAG2.2が2023年10月5日に正式に勧告されました。
この勧告は、海外だけでなく、日本国内の公共機関ホームページの運用をしている皆様に直接関係のある重要なものです。
弊社では、緊急でAAO特別セミナー等を通じてWCAG2.2の勧告を受けて必要になる取組の解説等を行っております。
公共機関のホームページ運用を所管している皆様からは、既に多数、WCAG2.2に基づく取組のご相談をいただいている状況です。
達成基準が、現行のJIS規格の1.4倍に
国内のウェブアクセシビリティに関する規格である日本産業規格JIS X 8341-3は日本独自の基準ではなく、世界中でウェブアクセシビリティの標準として広く採用されているWCAG2.0(国際規格ISO/IEC 40500:2012)と同一の内容です。
新バージョンであるWCAG2.2は、これまでのWCAG2.0に多数の達成基準(アクセシビリティ対応のルール)が追加される内容となっています。主には、スマートフォン等のモバイル端末や、学習障害、認知障害者等に必要な基準が追加されています。
達成基準の数を比較すると、以下のようになります。
適合レベル/達成基準 | JIS X 8341-3:2016 (WCAG 2.0) |
WCAG 2.2 |
---|---|---|
レベルA | 25 | 31 |
レベルAA | 13 | 24 |
レベルAAA | 23 | 31 |
計 | 61 | 86 |
現行の総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)」で、公的機関ホームページが達成することを求められている適合レベルはレベルA及びAAです。
「WCAG2.2」では適合レベルA及びAAの達成基準数は55となり、「WCAG2.0」の38と比べ約1.4倍の達成基準への対応が求められるようになる見通しです。
国内規格への採用・JIS規格改正
JISの改正時期については具体的な日程は未定ですが、改正内容については国際標準に基づきWCAG2.2と同内容になることは明らかです。
上で述べたように、対応項目が大幅に増えることや、影響範囲が広範になると考えられることから、JIS改正を待たず、WCAG2.2の対応推進が必要です。
次回以降のコラム
次回以降のコラムでは、JIS改正の内容、公共機関ホームページへの影響、JIS改正に向けて公表される予定の総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン」改訂版などについて、解説予定です。
- 第2回「JIS改正の内容と公共機関ホームページへの影響」 3月中旬頃予定
- 第3回「2024年みんなの公共サイト運用ガイドライン改訂」 4月上旬頃予定
- 第4回「総務省JIS対応状況調査結果に注目」 4月下旬頃予定
- 第5回「適切でない取組(1)」 5月上旬頃予定
- 第6回「適切でない取組(2)」 5月中旬頃予定
最新動向解説、対応のご支援
WCAG2.2の勧告以降、JIS改正に備えた取組として、WCAG2.2基準での検証やリニューアル準備のご相談を複数団体様よりいただき対応しています。
アライド・ブレインズでは、本連載コラムのほか、メールニュース、セミナー等を通じてJIS改正に向けた最新動向を皆様に解説する予定です。
また、WCAG2.2に基づくホームページの検証や庁内ルールの整備、リニューアルの準備検討など、JIS改正に備えた取組ご支援を強化してまいります。
関連セミナー:4月、5月 東京、大阪
お問い合わせ先
アライド・ブレインズ株式会社 公共コミュニケーショングループ
電話:03-3261-7431 / ファックス:03-3261-7432
メール:office@aao.ne.jp