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ウェブアクセシビリティJIS規格の改正に備える~公共機関ホームページに求められる対応
No.7 改正を踏まえたリニューアル
リニューアルまたはCMS導入(入替)を控えた団体は早期の対応を

[ 月刊『広報』 平成22年7月号掲載 ]

執筆担当
大久保 翌
(おおくぼ あきら)


行政の広報担当者に役立つ実務記事などを中心とした行政広報専門誌、 月刊『広報』 にて、連載「ウェブアクセシビリティJIS規格の改正に備える~公共機関ホームページに求められる対応」を開始しました。

日本広報協会様のご好意により、転載させていただきます。

ウェブアクセシビリティのJIS規格「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス- 第3部:ウェブコンテンツ(JIS X 8341-3 )」の改正が予定されています。

第7回は、今年度あるいは来年度にホームページのリニューアル等を予定している団体が、JIS X 8341-3改正を踏まえて注意すべき点を解説します。

JIS X 8341-3改正に対する関心の高まり

昨年度からJIS X 8341-3改正に関する解説を行なうセミナーを開催しておりますが、今年度に入って、定員を超える申込みをいただくことが増えています。

セミナー参加者アンケートの回答を拝見すると、特に今年度あるいは来年度にホームページのリニューアルまたはCMS導入(入替)を予定されている団体の方が、具体的にどのような準備を行ったらよいかについて、強い関心を持って検討を始めていることが分かります。

今年度JIS X 8341-3が改正されると、それ以降、改正後のJIS X 8341-3がウェブアクセシビリティ対応に関するルールの国内標準となります。多くの団体においてホームページのリニューアルサイクルが4~6年程度であることを考えると、今年度以降に実施するリニューアルにおいては、改正後のJIS X 8341-3に基づいた構築を実現していただきたいところです。

改正がもたらす変化とは

JIS X 8341-3改正に関して、リニューアル等を予定している団体に特に注目いただきたい変化は、「求められる対応が具体化されること」と、それに伴い改正前に比べて「検証が容易になること」です。

具体的な例を挙げてみましょう。注目いただきたい点は多々ありますが、今回は「色のコントラスト」に関する配慮を取り上げます。

現在のJIS X 8341-3では、「5.5.c) 画像などの背景色と前景色とには、十分なコントラストを取り、識別しやすい配色にすることが望ましい」という項目があります。「十分なコントラスト」が求められていますが、具体的な基準はJIS X 8341-3の本文の中では示されていませんでした。どの程度を「十分」とするかについて、参考となる情報は存在したものの、具体的な判断は各団体に委ねられていたと言えます。

改正後のJIS X 8341-3では、達成等級AA及びAAAにおいて、実現すべきコントラストを具体的な数値で示した達成基準が設けられる見込みです。これにより、色のコントラストが達成基準を満たしているかどうかを、一定の基準に基づいて検証できるようになります。

自団体の目標に基づいて仕様を提示する

リニューアル等を予定している団体においては、改正後のJIS X 8341-3に基づき、自団体の目標とする達成等級・達成基準を選定し(本連載の第5回を参照のこと)、委託業務の仕様として提示することが重要です。

これまではJIS X 8341-3の要求事項や検証基準が明確でなかったこともあり、公共機関のホームページリニューアル等の仕様書では、「JIS X 8341-3に準拠すること」といった文言だけが記載されることが珍しくありませんでした。

改正後のJIS X 8341-3では、A、AA、AAAという3つの達成等級とそれらを構成する61の達成基準に基づいて自団体の目標を選定し、仕様書に具体的な成果目標として記載することが可能となります。

本稿の執筆時点では、改正後のJIS X 8341-3は正式には発表されていませんので、リニューアル等を間近に控えているあるいは実施中という場合は、2009年 1月に財団法人日本規格協会「情報アクセシビリティ標準化調査研究委員会」が発表した「JIS X 8341-3 改正原案」を参考にされると良いと思います。

詳細な実現方法を委託業者と合意する

個々の達成基準には、複数の実現方法が存在するものが多々あります。具体的にどのような方法により達成基準を満たすのか、どのようなツールで適否を判定するかといった詳細について、事前に委託業者と合意した上で業務を開始することが重要です。「JIS X 8341-3 改正原案」では、「ウェブコンテンツに使用する技術、及び各達成基準に適合するための実装方法を明確にする。」と記載されています。

具体的な実現方法及び適否判定の方法や基準は、文書化することをお勧めします。このことにより、委託業者が業務において実施すべき事柄が明らかになり、検収の基準が明確になります。アライド・ブレインズでは、現在のJIS X 8341-3制定以来、具体的な実現方法や基準を「ウェブアクセシビリティ対応基準書」として取りまとめ、委託業者に仕様として提示することを推奨してきましたが、JIS X 8341-3の改正により、文書化し委託業者と合意の上で業務を実施することの重要性はより高まると考えられます。

改正後のJIS X 8341-3に基づいて検証する

リニューアル等の業務においては、目標としたアクセシビリティを確保できているかどうかを、納品前(公開前)に十分に確認することが重要です。

委託業者に対して、事前に合意した内容に基づいて十分な検証を実施することを求めるとともに、自団体の検収においても確認を行なってください。仮に、技術的に難しい点は委託業者の責任に委ねるとしても、ツールを用いて確認できる点や、詳しい知識がなくても判断できるような点については、ぜひ担当者ご自身でも確認されることをお勧めします。

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