ウェブアクセシビリティ向上への道 - だれもが使えるサイトを目指して -
No.08「みんなの公共サイト運用モデル」の手順書・ワークシートを活用する
[ 月刊『広報』 平成18年3月号掲載 ]
執筆担当
大久保 翌
(おおくぼ あきら)
行政の広報担当者に役立つ実務記事などを中心とした行政広報専門誌、 月刊『広報』 で連載している「ウェブアクセシビリティ向上への道 – だれもが使えるサイトを目指して -」の記事を、日本広報協会様のご好意により、転載させていただきます。
前号に引き続き、平成17年12月15日に総務省から発表された「みんなの公共サイト運用モデル (注1) 」(以下、同モデル)について解説します。
同モデルでは、取り組みの全体像が示されたほか、個々の対応を支援する各種手順書・ワークシート類が提示されました。メインターゲットである自治体はもちろんのこと、その他の公的機関や民間企業などのホームページでも活用が可能な資料です。
組織の体制づくり方針策定の参考にする
ウェブアクセシビリティの配慮を実践するためには、どのような役割分担や目標設定が必要でしょうか。同モデルでは参考資料を示しています。→【基本方針策定ガイド/取組体制構築ガイド/対象調査票(例)/目標・実施計画設定ガイド】
このような検討は、組織個別の事情に応じてなされるべきものですが、効果的な実践につなげるために大切な視点があり、同モデルの示す資料は、それらが漏れなく考慮されるようにという意図で用意されています。具体的にイメージできるように、基本方針(ポリシー)の例示や、目標・実施計画設定の例示なども含まれています。ただし、そのまま切り貼りしてもあまり意味はありません。資料を参考に十分な現状分析と検討を行いましょう。
制作会社への発注の際に役立てる
ホームページのリニューアルや新規制作のタイミングは、ウェブアクセシビリティ対応をまとめて行う貴重な機会です。そこで同モデルでは、企画・制作の過程でアクセシビリティも合わせて配慮するための取り組み内容と支援資料を示しています。→【ホームページ・リニューアル等実施手順/基本検討シート/対応方針回答シート/詳細検討シート/実施内容確認シート】
大規模なリニューアルや新規制作は、外部委託で行われることが多いと思います。これまでは、自治体などが制作会社にアクセシビリティ配慮を求めたいと思っても、「どのように情報を提示するべきか」「開発から検収の過程でどのようなやり取りを行うべきか」分からないケースが多かったようです。同モデルでは、発注者が行うべき検討、制作会社が中心となって行うべき検討を示す手順書、個別の取り組みを支援するワークシート類が用意されました。
配慮のあるホームページが出来上がるためには、必要な手順を一つ一つ踏んでいくことが重要となります。不慣れなことも多いと思いますが、制作会社の協力を求めながら、手順書・ワークシート類を参考に取り組んでみてください。
日常の運用での配慮に役立てる
リニューアルの機会が最適といっても、多額の予算を伴うプロジェクトはそうそう行われるものではありません。同モデルは、そうした機会がなくとも日々実践できる取り組みについて、手順書やワークシートを用意しています。→【簡易点検ガイド/外部からの意見の処理手順】
例えば、簡易点検ガイドは、特殊なツールや技術的な知識がない場合でも実施できる点検の項目と手順が示された資料です。試しに、今日からでも活用してみてはいかがでしょうか?また、利用者から寄せられる声をホームページ制作・運用に反映することはアクセシビリティでは特に重要になります。体制や運用が十分でない場合には、これを機会にぜひ検討しましょう。
利用者を理解し、その声を反映するために
障害者や高齢者から生の声を得るための取り組みは、最も重要であるものの、実際にはほとんど行われていません。そのような機会をつくること自体が、経験のないことだからだと思います。同モデルでは、実際に障害者や高齢者に協力を得て、取り組みの様々なステップでホームページの評価を実施するための参考情報が示されました。→【障害者・高齢者による評価手順】
ぜひ、示された手順や情報を参考に取り組みを行ってみてください。実際のところ多くの困難が伴うと思います。しかし、私の経験から考えるに、実施者・協力者ともに双方の試行錯誤や失敗からこそ学ぶことが多いといえます。机上の学習では到底得られない発見やリアリティとの出会いが、適切な配慮実践につながるでしょう。
これら各種手順書・ワークシート類を活用した取り組みは、前号で解説したようにPDCAサイクルを意識し継続的に実施されることが重要です(モデルの考え方や全体像については研究会報告書第2部参照)。
研究会報告書や各種手順書・ワークシート類は、総務省のホームページ (注1) から入手できます。なお、A.A.O.サイトではより詳しい解説を掲載しています (注2) ので、関心のある方はそちらも参考にしてください。
- 注1 みんなの公共サイト運用モデル
- 平成16年11月17日から開催された「公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会」の検討成果として、17年12月15日に総務省が発表。アライド・ブレインズでは、総務省の委託を受けこのモデルの検討を支援してきた。また、総務省主催で3月に開催されるセミナーの事務局を担当している。
- 注2 モデルの詳しい解説(A.A.O.)
- A.A.O.サイトでは、「みんなの公共サイト運用モデル」の考え方や個々の取り組みの位置づけ、手順書やワークシートの特徴などを詳しく紹介している。
- A.A.O.「みんなの公共サイト運用モデル」の解説ページ