Voice ~公共サイトの担当者が語る~
No.2 障害者支援サイト「の~まらいふ杉並」開設を担当して
[ 2007年5月8日 ]
寄稿
杉並区保健福祉部障害者施策課
端井 洋蔵さん
最新の行政情報を提供する手段として開設
杉並区では、以前から冊子版「障害者のてびき」を3年に1度発行していますが、紙ベースでの発行であるため、情報提供の新鮮度が低下していく傾向がありました。そこで、最新の行政情報を提供する手段としてホームページを活用していくことが必要となり、「障害者のてびき」のウェブ版である「の~まらいふ杉並」を開設しました。
障害のある方にとって使いやすいサイトにするために
サイト作成にあたり特に気をつけたことは、「障害がある方にとって、サイトが簡単で便利に使いやすくなっていること」です。このことは、簡単なようですが、実は一番難しいことであります。何を基準に使いやすいと考えるかによって、取り組み方に違いが出ます。
また、現状として、今ある既存のサイトが障害のある方にとって実際使いやすくなっているかと考えると、決してそのようになっていません。そのような状況で使いやすいサイトを構築していくには、予算をはじめ様々な制約条件の中でよりよいものを目指すことが求められます。当然ながら「の~まらいふ杉並」では、杉並区公式ホームページに先んじて障害のある方にとっての使いやすさを最優先目標としました。
障害のある方の立場に立ってサイトを作成することの大切さを実感
サイトを準備する過程では、健常者にとって便利なサイトであっても障害のある方にとってはいかに使いづらいものであるかということがいやというほど認識できました。例えば、音声読み上げ機能への対応、文字の大きさや色の反転が簡単にできること、マウスを使わなくてもキーボードだけで操作できることなどです。まずは一人一人が、障害のある方や年配の方の立場に立ってサイトを作成することが重要で基本的なことであると思います。人はいつの日か年をとり、体の自由が制約されていきます。そのことを自覚し、先のことを考えて今どうすべきかを考え行動することが大切であると考えさせられました。
すべての方に満足してもらえる使いやすさとは
一方で、様々な障害のある方すべてにサイトの使いやすさについて満足していただけることが可能なのかということも考えさせられました。「すべての方が満足」と考えるとほとんど不可能ではないか。ならばどうすればよいのか。限られた予算の中で可能なものから優先順位を考えて取り組んでいくしかないのではないかと思いました。
組織内でアクセシビリティに関する理解を得ることに苦労
サイトの使いやすさであるアクセシビリティの実現について、組織全体でコンセンサスが得られることが重要ですが、現状は、全庁的に十分理解されていると言うには程遠い状況です。そのような中でアクセシビリティの重要性を強調し理解してもらいながらサイトの構築をおこなっていくことは、きわめて難しいことでした。今も、コンセンサスが得られた上でサイト作成が進んでいるとは言えません。今後の課題でもあります。
広報課や委託業者の協力を得てサイトを構築し公開
サイトの構築にあたり、組織内の協力がどの程度得られるのか、サイトの制作を業者に委託するのに、経験豊富で頼りになるコンサルタントや制作会社を選ぶことができるのかといったことも課題でした。
幸いにして、庁内的には杉並区の公式ホームページを担当している広報課の強力なサポートを得ることができ、委託契約したコンサルタントと制作会社は、お互いの連携・協力により、短い制作期間でアクセシビリティの高いサイトを作成してくれました。
アクセシビリティをより確かなものとし、次のステップへ
運用会議の様子
当面は、サイトの安定的な運用とアクセシビリティの実現を、より確かなものにしていくことが目標です。サイトの使いやすさを実現させてこそ、次のステップに進むことができると考えます。
将来的な理想としては、障害者支援サイトであるとの特性から、障害のある方が、身近な地域で生き生きと生活している姿をサイトを活用して自ら情報発信すること、障害のある方をはじめ関係者が、相互に情報を交流しながら意義ある生活を楽しむことに貢献できればと考えています。