レポート 公共サイト運営の最前線
第1回「のーまらいふ杉並 ~試行錯誤を積み重ねて目指す本当のアクセシビリティ~」
[ 2009年4月10日 ]
ゲスト
杉並区保健福祉部障害者施策課
係長 井上恭子さん
主査 福原善之さん
東京都杉並区では、2007年に障害者の生活支援サイト「のーまらいふ杉並」を開設しました。それ以降、毎年、障害者によるサイト評価や支援団体等のヒアリング調査を繰り返しながら、アクセシビリティの向上に取り組み続けているそうです。
2008年4月に障害者施策課に異動となり、「のーまらいふ杉並」の担当になられた井上さんと福原さん。ホームページについてもアクセシビリティについてもゼロからのスタートだったそうです。1年間担当されて、何をお感じになったのでしょうか。試行錯誤を積み重ねながらサイト改善に取り組まれているお二人に、お話をうかがいました。
のーまらいふ杉並のご紹介
アライド:最初に「のーまらいふ杉並」についてご紹介いただけますか。
福原:杉並区では3年ごとに、障害のある方の地域生活を支える各種制度や利用方法、施設の案内などをまとめた「障害者のてびき」という冊子を発行しています。「てびき」に載っている情報について、最新のものをどんな障害の方にも利用しやすい方法で提供するために2007年4月「のーまらいふ杉並」を開設しました。その他、のーまらいふ杉並ではイベント情報の紹介にも力を入れています。ホームページでしか情報を得ることができない方もいるということを意識し、障害者の方の視点ではどうなのかを考えながら記事を作るようにしています。
井上:区の公式ホームページには掲載基準や制約がありますが、のーまらいふ杉並は障害に関する情報であればできるだけすみやかに、色々な内容のものを掲載するようにしています。
アライド:イベント情報はどのように収集されているのですか。
福原:主催者から提供される情報が中心となります。のーまらいふ杉並は、区の広報紙や公式ホームページに比べるとイベント情報が少ないので、双方をうまくリンクして、主催者の方から提供された情報をどちらにも掲載できる仕組みが必要だと思います。
利用者や職員からの反響は
アライド:開設から2年経ちますが、障害者の方などからの反響はいかがですか。
井上:視覚障害者団体の方から、のーまらいふ杉並をかなり活用しているとうかがいました。障害者の方向けの制度やイベント情報の提供からさらに踏み込んで、例えば在宅で申請ができるようになるといいといった要望も聞いています。障害をお持ちの方にとって自宅でインターネットを活用して情報収集や手続きができるというのは非常に有効だと認識しています。それくらい皆さんはのーまらいふ杉並に期待を持たれているということではないでしょうか。遠い先かもしれませんが、申請なども検討する必要があるのかなと思います。
アライド:区の職員の方からの反響はいかがですか。
福原:区の中で、様々な部署が独自のホームページを立ち上げています。のーまらいふ杉並はウェブアクセシビリティにかなり力を入れていると評判になっているようで、どのようにアクセシビリティに配慮すればよいか教えて欲しいと言われたことがありました。
のーまらいふ杉並の運営体制
アライド:のーまらいふ杉並をどのような体制で運営されていますか。
福原:私たち二人で相談しながら記事を用意して、掲載は制作を委託している事業者に依頼しています。その他、年に数回「運用会議」を開き、課題や改善方法について具体的な検討を行っています。運用会議は障害者関連の所管課や施設の職員、広報課のホームページ担当者、障害者団体の方がメンバーとなり、委託している制作会社、コンサルティング会社も参加して検討を行っています。
アライド:運用会議ではどのようなことを話し合われているのですか。
福原:まず、毎回アクセス状況を制作会社の方から報告していただき、アクセス数の増減やどんな情報をよく見ていただいているかの確認をしています。また、昨年度から毎年、障害者のモニターにのーまらいふ杉並の使いやすさを評価してもらう「ユーザー評価」や、障害者支援団体などへのヒアリング調査を行っています。運用会議ではこれらの調査から明らかになった課題について改善策を検討して、制作会社に修正してもらっています。
アライド:この2年間のアクセス数の推移はいかがですか。
福原:アクセス数は増えてきています。情報量も増えており、区民と事業者の両方から利用されるようになってきていると思います。これから障害者手帳を取る場合に、手続き方法や利用できる制度についてのーまらいふ杉並で調べている方が多いのではないかというイメージを持っています。2008年夏に区内の障害者の方を対象にしたアンケート調査を行いましたが、まだまだのーまらいふ杉並の認知度は低いという結果でした。より多くの方にのーまらいふ杉並を知っていただけるよう、一層の努力が必要だと思っています。