レポート 公共サイト運営の最前線
第6回「10万を超える”浮遊ファイル”の洗い出し・削除を実現した仙台市」
[ 2013年6月5日 ]
ゲスト
仙台市総務企画局広報課 主事
武内愛美さん
宮城県仙台市では、2011年2月にコンテンツ管理システム(CMS)を導入し、公式ウェブサイトを全面リニューアルされています。10万ページを超えていたコンテンツを約3万ページ以下に整理したうえでのリニューアルでしたが、2年間で2万ページほど増加し2012年時点では約5万ページを公開されていました。
ところが「A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査 自治体編第7回」の調査結果をきっかけに、深刻な問題である「浮遊ファイル」注1の存在が明らかになります。
大規模な公共サイトにとって決して他人ごとではない「浮遊ファイル」の問題解決に取り組まれたきっかけと成果、今後の施策について、仙台市総務課企画局広報課主事・武内愛美さんに伺います。
注1 公開ウェブサーバー上に存在しURLが付与されているものの、どのページからもリンクが有効でないファイル。
市民の重要な情報源として定着
アライド:運営開始の経緯などを教えてください。
武内:仙台市公式ウェブサイトは1995年から運営を開始しました。開設当初からしばらくは、各課からWord、Excel、または手書きで寄せられる原稿を広報課2~3名の担当者でHTML化して公開する運営方法を続けてきました。
アライド:現在の構成はいつからでしょうか。
武内:公式ウェブサイトの役割が重要さを増すにつれ掲載依頼も大幅に増加したため、2011年2月にコンテンツ管理システム(CMS)を導入し、全面リニューアルを行いました。
アライド:リニューアルを機に運営方法を見直されたのですね。
武内:各課でCMSを使って作成した原稿を、広報が確認して承認・公開するように運用フローを変更しました。以前は広報課もページ作成ソフトを使っていたのですが、リニューアル後は原則として全庁でCMSを利用しています。この「原則として」という部分が、問題になってくるのですけれど..。
アライド:閲覧状況はいかがですか。
武内:開設以来年々増加して、震災のあと一挙にアクセスが増えました。現在は震災後に比べると落ち着いていますが、情報源として市民生活に定着しているものと思います。
アライド:リニューアル前のサイト規模はどの程度だったのですか。
武内:10万ページに至っていました(苦笑)。リニューアルを機に整理の必要を感じたため、各課へ不要ページがないか照会をかけ、リニューアル時点では一度3. 3万ページ程度に削減しました。ただ、この際「削減」でなく「保持」を原則としたリニューアルをしたことが、今回ご相談した浮遊ファイル発生の要因になりました。
2万ページのギャップとは?
アライド:浮遊ファイルの存在は以前からお気づきだったのでしょうか?
武内:多少はあるだろうと思っていました。なぜかというと、利用者の方から、「削除した存在しないはずの古いファイルについてのお問い合わせがときどき寄せられていたからです。その時は疑問に思っていましたが、数ヶ月に一度ぐらいのペースでしたので、該当のページを削除して対応していました。
アライド:浮遊ファイルの存在どころか、全体のページ数を把握していらっしゃらないケースは少なくないようです。問題に気づかれたきっかけを教えていただけますか。
武内:本当に「危険な状況だ」と認識したのは、昨年9月の「A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査 自治体編」の発表セミナー注2に参加したときです。
セミナーに参加すると、自団体の解析結果サマリーをいただけますよね。その資料を見たら、アライド・ブレインズのシステムで解析した仙台市公式ウェブサイトのHTMLページ数は「3万ページ強」と書かれている。でも、我々が把握していた公開ウェブサーバー上のHTMLページ数は約5万です。「この2万ページのギャップは何だろう?」と..。
アライド:そこで、浮遊ファイル整理のご相談をいただいたわけですね。
武内:先ほどお話しした通り、以前からの問い合わせの経緯もあって、これは即対応しなくてはいけない、削除したと思っているページ、もしくは公開していないはずのページが2万ページも公開されているという危険な状況は明らかでしたので、とにかく速やかに浮遊ファイルを特定して、削除しようということになりました。
注2 アライド・ブレインズは、公共サイト共通の改善指標を提供することを目的に、2006年より毎年「A.A.O.ウェブサイトクオリティ実態調査」を実施し、調査対象サイト運営機関向けの結果発表・解説セミナーを開催している。調査した公共サイトは2012年時点でのべ4,500以上。2013年は1,178サイトの調査を予定している。