第13回「5年サイクルのリニューアルと、継続9年のアクセシビリティ向上」
[ 2025年4月10日 ]
ゲスト
姫路市 政策局 市長室 広報課
係長 関屋 良平さん
主任 榮 美紗さん
主事 見方 建斗さん

兵庫県姫路市は、2024年9月24日に公式ウェブサイトを5年ぶりにリニューアル公開されました。
今回のリニューアルは、2019年の前回リニューアルから5年サイクルで計画・実施されたものです。その取り組みの内容と、関連サイトを含めたウェブアクセシビリティの確保・維持・向上に向けた継続的な取り組みについてご紹介いただきます。
姫路市公式ウェブサイトのリニューアルについて
アライド:今回のリニューアルの検討を開始した時期はいつころでしょうか。
榮:2019年に前回のリニューアルが完了して、その5年後を目指して計画しました。本格的に準備を開始したのは2022年からだと思います。
アライド:今回のリニューアルで力を入れて取り組んだのはどのようなことでしたか。
榮:姫路市の魅力をアピールするために、姫路城公式サイトへ誘導するリンクをトップページに大きな画像で掲載しました。姫路城以外の市の魅力発信にも力を入れて、「観光・文化・スポーツ」の大分類メニューページは、他の大分類と異なるデザインにしました。また、スマートフォンファーストを意識して、ボタンの大きさや、余白を十分に設けるなど、操作性の向上を目指しました。そのほか、共通のヘッダーに緊急情報のボタンを設け、常に全ページから緊急情報にアクセスできるようにしました。このあたりが大きく変わったところだと思います。
関屋:トップページに姫路市に関する画像を配置し、「観光・文化・スポーツ」の分類を整備したことで、姫路市の魅力をより伝えられるサイトになったと思います。一方で、職員からは市外の人向けに注力しすぎなのではないか、市民向けの情報を重視したほうがいいのでは、という意見もありました。そのバランスが非常に難しいと感じています。
アライド:2019年に実施された前回のリニューアルの際は、市外の方に対する姫路城を中心とした魅力のアピールと、市民の方に暮らしの情報をきちんと伝えることを両立する方針だったと思います。今回のリニューアルにおいても、両方を大事にしようとされたのでしょうか。
関屋:はい。両方を重視し取り組みましたが、リニューアル後に、例えば市民生活に密着した情報をトップページのもっと上の方に掲載してはどうか、という意見がありました。このあたりがすごく悩ましいところですね。
アライド:特にスマートフォンの画面では、一画面分に入る情報量がかなり限られるので、市民向けの情報と市外の方向けの情報をどのように掲載するのが良いか、その掲載順など、リニューアル後も引き続き検討が必要ですね。
コロナ禍の経験を踏まえ、大幅に見直した緊急情報発信
強調すべき情報があるとき、トップページの上部に掲載することはどの団体でも取り入れやすい方法かもしれません。しかし、例えば、重要なお知らせを「カルーセル」と呼ばれるスライド式の画像で掲載した場合、画像が動いてしまうために読み取れない人が出たり、アクセスした際に表示されていないお知らせを認識できなかったりするなど、様々な問題が発生します。姫路市様は、リニューアルに向けどのような検討をされたのか、伺いました。
榮:2019年のリニューアル後にコロナ禍となり、情報発信がかなり大変でした。当時は、トップページのメインビジュアルの画像にお知らせ情報を掲載しましたが、文字量の多い画像を担当課が作成して、スマートフォンで見るととても小さくて見にくくなってしまいました。その反省を踏まえ、今回のリニューアルでは、メインビジュアルには写真しか載せないようにして、重要なお知らせは別の方法で掲載することにしました。
見方:緊急情報を全てのページから見られるようにしたのは、コロナ禍の経験を踏まえたものです。緊急情報や重要なお知らせを長期にわたって大量に掲載し続ける事態は、これまでありませんでした。リニューアル以前のコロナ関連情報は、特設サイトとして情報の置き場を作っていました。しかし、分類のツリー構造を意識した掲載ができなかったので、トップページ以外から閲覧し始めた人にとっては気づきづらかったかもしれません。
榮:そこで、「安全・安心」という大分類を新設して、災害時や避難所の情報などを掲載することにしました。中分類から大分類に階層を上げたことで、目に触れやすくなっていたらいいなと思います。
榮:緊急情報は、防災緊急情報と、重要なお知らせという2つのカテゴリに分けました。初期表示で緊急情報が一つでもあれば展開表示するか、ボタンのみ表示するか、表示方法をどうするか、という議論がありました。また、担当部署である危機管理室と、ハザードマップや、災害避難カードなど、掲載リンクを協議しました。また、大規模災害時、軽量版トップページに切り替わった時に、情報を分類分けして掲載していけるような仕組みを用意しました。
榮:軽量版トップページ切り替え後の分類の項目は、広報課(管理者)でしか編集できなかったのですが、リニューアル公開後に再度検討して、危機管理室でも分類を調整できるように改修しました。
アンケートやSNSを活用して市民参加型の魅力発信を目指す

アライド:姫路城、姫路城以外の魅力に関する情報発信について、どのような見直しを行いましたか。
榮:大分類「観光・文化・スポーツ」は、姫路城以外の施設や催し物の情報を掲載する分類として、他の分類とはデザインを変えて、トピックス領域を設け、旬なイベントや広報したいことを画像とセットで掲載できるようにしました。運用が始まってから、主に広報課の職員が作成して担当課に確認し掲載しています。
アライド:トップページのメインビジュアルの写真はどのように運用されていますか。
榮:姫路市の公式インスタグラムで、市民が投稿した姫路市の写真を使用しています。これはリニューアル前から引き継いで取り組んでいるもので、市民参加型のトップページを目指しました。
榮:リニューアル前に市民向けにアンケート調査を行い、その結果を踏まえてリニューアル方針を作成しました。姫路城以外の魅力発信に力を入れる方針は、アンケートの回答に基づいて設定したものでした。
リニューアル方針に基づき情報分類見直しを実施
アライド:リニューアル準備期間としては十分だったでしょうか?2019年度に設定した計画に沿って、2022年度を事前準備に充てられたと思います。
榮:情報分類の見直しに時間がかかりました。2022年度にアンケート調査等を行った上でリニューアル方針を策定し、その内容に基づいて情報分類の見直しを行っていきました。この期間では、サイト全体の情報分類を見直すことは難しかったと思います。第3,4階層まではある程度整理できましたが、広報課だけでは判断しきれないコンテンツがあり、リニューアル以前の状態のまま移行した部分もあります。2023年4月にページ削除の通知を職員に向けて出しましたが、すべてを確認できたわけではないです。
榮:2022年度にCMSの調査を実施しました。製品の動作や表示を確認するデモンストレーション調査を行いましたが、知らない機能も多くありました。またリニューアルを経て、こんなサイトの作り方もあるのかという発見がいろいろ出てきました。リニューアル事業者選定前に、もっとその他の自治体や、自治体以外のサイトを見るなど十分な準備を行えたら、こんな工夫や機能が欲しかったということがあったかもしれません。
プロジェクト計画とコミュニケーションの重要さ
リニューアル事業者選定前の事前準備では、情報分類、サイト構造設計を検討し、要求仕様をまとめました。事業者が決定し、いよいよリニューアルプロジェクトが始まります。
姫路市は中核市に指定されており、公式サイトは17,000ページ以上の大規模なサイトです。事前準備の重要性はもちろんのこと、仕様で求める内容が確実に実現されるか、コンテンツが問題なく移行されるかといった点は、リニューアルの成否を左右する重要な要素であり、プロジェクト開始後の計画、進行管理、事業者とのコミュニケーションなどが大きく影響します。今回のリニューアルにあたり、姫路市様がどのような点を意識して取り組まれたのか、伺いました。
アライド:リニューアルを担当する事業者が決定しプロジェクトを進行する過程で、姫路市様として大事にされたことや工夫したことはありますか。
榮:結果的に、前回と同じ事業者にリニューアルを担当してもらうことになりました。お互いに慣れていることがマイナスに働かないように、緊張感を持って進行することに特に力を入れました。定期的な会議の実施や、初期段階で全体的な工程を設定して工程ごとの締め切りを決めること、スケジュールをしっかり管理することを重視しました。
アライド:事業者とのやりとりで苦労されたことはありましたか?
榮:1回目の移行のときに、削除するように相談していた分類が残った状態で移行されたという問題がありました。事業者の組織内での伝達漏れが原因でした。問題が発生した原因と対応策の報告を求め、同種の問題が再発しないように相談しました。
アライド:デザイン検討は予定通りに進行しましたか。
榮:事業者の作業が計画よりも遅れたことと、複数回の調整が発生した影響で遅延しました。検討の初期段階はメインサイトのトップページデザインだけに集中して検討できましたが、進行するにつれて、下層ページ、サブサイトのデザインなどを複数並行して検討する必要があり大変でした。当初の計画では、3月末の検討完了を目指していましたが、ゴールデンウイークの頃まで検討が必要となりました。
入念に検討したコンテンツ移行及び改善計画と進行
リニューアルにおけるコンテンツ移行作業とは、既存のページを新しいサイトで適切に表示されるように移し替える作業です。姫路市様は、事業者に対して、適切な移行作業と検証の徹底を要求することに加え、事業者との間で行き違いなどが発生していないか、依頼した内容が意図通りに反映されているかどうかなどを、広報課、各所管課が複数回に分けて確認しました。
アライド:移行計画はどのように設定されましたか。
榮:姫路市の確認機会を6回設定して、4回目までをテスト環境、5回目以降を本番環境で確認しました。
榮:当初、事業者が作成したコンテンツ移行及び改善計画書では、作業工程が全て表形式で記載されており、姫路市側の作業と事業者側の作業の日程や関係性が分かりづらいものでした。各工程で何が完了し、次にどのような作業が始まるのか、イメージしにくかったのです。そこで、姫路市がより具体的に工程をイメージし把握できるようにするために、フロー図による資料の作成を提案し、何度も協議と調整を重ねて計画を完成しました。
関屋:設定した計画に基づいて、原課の所管するコンテンツが問題なく移行されているか、広報課だけでなく各所管課に確認を依頼しました。
榮:確認と修正を繰り返す計画としたことで、2回目、3回目になるにつれて、修正後のページと新規のページとの兼ね合いで、確認するページ数が減っていきました。4回目の確認は1週間弱の期間としていましたが、確認対象ページ数がかなり絞られた状態となっていたので、問題なく進行することができました。
アライド:プロジェクト全体で13ヶ月程度でした。
榮:年度をまたいでのプロジェクトでした。コンテンツ移行結果の確認については、本市の組織改正後にスタートすることが望ましいと考え4月に開始しました。