「ユーザーの声」を伝える
[ 2004年2月23日 ]
執筆担当
伊敷 政英
(いしき まさひで)
ウェブアクセシビリティを実現させるには、コンテンツ制作者、支援技術メーカー、ウェブサイト制作ソフト(オーサリングツール)のメーカーのそれぞれが努力し、またお互いに連携を図ることがとても重要です。しかしもう1人、とても重要なプレイヤーがいます。「ユーザー」です。
ユーザーの役割はもちろん、「ユーザーの声を制作者へ伝える」ことです。今回のコラムではこのユーザーの役割について、少し考えてみたいと思います。
「ユーザーの声」をもっと伝えよう
先日、アクセシビリティをお仕事で実践されているデザイナーさんから、「ユーザーの声を聞くことはほとんどない」というお話を伺いました。また以前にも、「一応アクセシビリティに配慮してはみたけれど、本当にアクセシブルになっているのか心配」というウェブ担当者の声を聞いたことがあります。さらに、「うちのサイトを目の見えない人が見てるわけないでしょ」と言って、アクセシビリティへの対応を断られたこともあります。
この3つの例から、ユーザーの声がいかに重要かご理解いただけるでしょうか。デザイナーさんやウェブ担当者の方にとっては、ユーザーの声を届けることでサイトの良い点と問題点がはっきりし、今後の励みにもなるでしょう。最後の例の場合も、予想もしていなかったユーザーからのアクセスを認識し、アクセシビリティへの対応を検討するかもしれません。
あなたの声を「伝える」ために
「ユーザーの声を伝えることが重要」とは言っても、ただ単に「使えない」「音声で読み上げない」とだけ言ったのでは制作者には伝わりません。「正確に伝わる意見」にすることが重要です。
では、どうすればいいのか。
そこで、「伝わる意見にするための3か条」を考えてみました。
- 意見を言うときはなるべく具体的に
- まず自分の状況について、障害の有無や程度、使用している支援技術(支援技術の名前、バージョン、開発元ウェブサイトのURLなど)を伝える必要があります。またサイトの問題点を指摘するときは、指摘箇所をできる限り特定し、「どのような問題が起こっているのか」、「どうなればよいのか」を具体的に伝えることが重要です。
- 良いところはきちんと「すばらしい」と伝える
- 「意見を言う」ことと「問題点を指摘する」ことはイコールではありません。アクセシブルなサイトを見つけた時には、友達に紹介するだけでなく、そのサイトの管理者に「すばらしい」と伝えることも重要です。サイト管理者の励みになり、よりアクセシブルなサイトを目指してさらに努力を重ねてくれることでしょう。
- あくまでも紳士的な態度で
- これは言うまでもないことかもしれませんが、ウェブ制作者も人間です。あまり威圧的な態度ではめげてしまいます。アクセシブルでないサイトの多さに感情的になることもあるかもしれませんが、そんなときは一度深呼吸して、気持ちを落ち着けてから意見を言うといいと思います。
知識習得のすすめ
「伝わる意見にするための3か条」で、できる限り具体的に問題点を指摘することをあげました。しかしこれは、実はそう簡単なことではありません。
また、「ウェブサイトに問題があるのか、支援技術に問題があるのか、あるいは自分の操作ミスなのかわからない。」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなときの強い見方、具体的に問題点を指摘し「伝わる意見」にするための最大の武器は「ウェブに関する知識」です。ウェブサイト制作には、HTMLやCSSなどの言語を使用します。そこでこれらの言語に関する知識を習得しておくと、「伝わる意見」を言いやすくなるのです。具体的には以下のような利点があります。
- 問題箇所を特定しやすくなる
- HTMLやCSSの知識があると問題箇所を特定しやすくなります。場合によっては「ソースのここが問題」というようにピンポイントで指摘することも可能です
- 「なぜその問題が起こっているのか」というところまで指摘できる
- 「読み上げない」「操作しにくい」など起こっている現象だけでなく、「この画像に代替テキストが入っていないので読み上げない」「スタイルシートで行間を適切に設定していないので、リンク同士が近づきすぎている。そのためマウスでの操作がしにくい」というように、問題の原因まで指摘することができます。
最後に
今回は「ユーザーの声を伝える」というテーマについて考えてきました。
A.A.O.は「利用者と制作者のための実用サイト」です。ユーザーと制作者の橋渡しができればと考えています。そしてそのために、以下のようなコンテンツを用意しています。
- ウェブを活用する障害者の声
- さまざまな障害を持つユーザーの方々にご協力いただき、それぞれの利用環境や、ウェブを使うようになって変わったことなどをご紹介しています。
- 音声で使う!実用サイトリンク集
- 音声読み上げソフトのユーザーの方々にご協力いただき、音声で使いやすいサイト、よく利用するサイトをご紹介しています。音声ユーザーの方々からのご投稿もお待ちしております。
- アクセシビリティリンク集
- アクセシビリティに関するさまざまな情報へのリンク集です。「2-1-2.正しいHTMLやCSSを書くための情報」では、HTMLやCSSなどについての知識を得られるサイトをご紹介しています。「伝わる意見」を言うための知識習得にご活用ください。
アクセシビリティに積極的に取り組む企業や自治体は、少しずつですが着実に増えてきています。また今年中には、アクセシビリティがJIS規格として策定されます。アクセシビリティを一過性のブームで終わらせずに、きちんと定着させるためには「ユーザーの声」は欠かせません。
ぜひ皆さんの「伝わる意見」を、どんどん届けて欲しいと思います。