災害時の情報受発信
第2回:災害時に求められる「ニーズの把握」
[ 2011年12月6日 ]
一方、避難所では…
3月11日の震災以降、障害を持つ被災者はばらばらになりました。ある人は家族とともに避難所へ逃げました。避難所生活では周囲の被災者や、ボランティア・NPOなどの支援者とのコミュニケーションが課題となりました。宮城県に住む友人・知人から教えてもらったエピソードをご紹介します。
視覚障害を持っている被災者は避難所の様子がつかめず、トイレや食料配布の場所をいちいち教えてもらわなければなりませんでした。「何度もお願いしたり、夜中に家族や隣の人を起こすのは申し訳ない」「人に迷惑をかけたくない」などの理由から、水分をとることを控えたり、一日中あまり動かないようにしている、という方もいました。もし私が避難所で暮らすことになったとしたら、特に日が浅いうちは周囲に遠慮して、あまり動かないようにしていたかもしれません。この方はその後、家族や避難所のスタッフと話し合って、一人でトイレに行けるような壁沿いの動線を確保するなどの配慮がされるようになりました。
また聴覚障害をもつ人の場合、食料や物資の配布を知らせる支援者の声が聞こえなかったり、そもそも避難所に聴覚障害者がいることに気付いてもらえず適切な支援が受けられないケースがあったそうです。見た目ではその人が聴覚障害を持っていることが分かりにくいため、まずは避難所に聴覚障害者がいることをスタッフに理解してもらうことから始めていました。そのうえで、筆談を用いて必要なものを聞き取りしたり、炊き出しや物資の配布情報を大きな文字で書いて壁に張り出すなどの配慮がされるようになりました。
さらに、知的・発達障害や自閉症の子供がいる場合、子供がパニックを起こしたり、突然大きな声を出すなどしたため、周囲の目が気になって避難所にいられなくなり、壊れた自宅で生活している、という方々もいました。
このように、障害を持つ被災者や家族への支援には、周囲との適切なコミュニケーションが欠かせません。直接コミュニケーションをとることによって必要な支援の内容や方法を聞き取り、その人にあった配慮がなされるようになっていきました。
大切なのは「連携」と「コミュニケーション」
これまでお話ししてきた事例から、災害時の障害者支援には「連携」と「コミュニケーション」が欠かせないことがわかります。自治体とNPOなどの支援団体が連携する。そして当事者と支援者が密にコミュニケーションをとる。こうやって書いてみると、とても当たり前のことですね。そしてこのことは、障害者の支援だけでなく、被災者支援全般に言えることです。
しかし、言うは易し。連携とコミュニケーションを実際に行おうとすると、災害がおこってから急に連携しようと思ってもうまくいきません。平時から、自治体と支援団体がお互いに何ができるかを議論し、体制の整備を続けていくことが最も大切なのではないでしょうか。