連載「JIS X 8341-3改正動向と公共機関HPに必要な対応」
第6回「総務省より、不適切な取組の是正依頼文書発出」
[ 2024年11月22日 ]
執筆担当
大谷 昌也
(おおたに まさや)
本連載は、ウェブアクセシビリティのJIS改正、総務省みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)などの最新動向、公共機関ホームページに求められる対応を、総務省推進事業事務局を毎年担当しているアライド・ブレインズのコンサルタントが解説します。
総務省が10月に不適切な取組是正依頼を発出
2024年10月に総務省より「適切でない取組」の是正を依頼する文書が発出されました。
2024年5月に公開された最新の総務省ガイドラインは、公共機関に求める取組が示されているとともに、過去の調査結果を踏まえ、
「適切でない取組の例」が具体的に列挙され、是正するよう求めています。
総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」39、40ページを参照ください
JIS試験の不正な実施
JIS規格に問題のあるホームページを「問題がない(AA準拠している)」と公表している事例が多数あることが、総務省の調査で報告されています。
(参照:連載第5回コラム「総務省が是正を求める、誤ったアクセシビリティ対応」)
その原因の一つと考えられる不適切な取組として、総務省ガイドラインには以下が例示されています。
- ホームページ等の全体(全ページ)を対象に改善に取り組まずに、JIS X 8341- 3:2016 に基づく試験の対象ページのみを改善して適合レベル AA 準拠と公表することで、ウェブアクセシビリティに対応したことにしている。
再試験の誤った実施
総務省ガイドラインは、ホームページの全ページのJIS対応を求めています。一方、JISに基づく試験は非常に多くの検証を実施する必要があることから、大規模なホームページについては代表的なページを抽出するだけでなく、ランダムサンプリングでページを抽出して検証を行うことで、ホームページ全体のJIS規格対応状況を評価します。
このような目的と仕組みを踏まえず、抽出した一部のページを試験した後に、試験対象ページの問題だけを改善して「AA準拠」を公表する事例が多数確認されています。
例えば、池の水質検査をイメージしてください。コップ一杯の水を汲んできて、その水を濾過して飲めるようにしたとしても、「この池の水は飲んでも安全な水です」とは言えないはずです。検査として成り立っていない、と理解できると思います。
このようなやり方を、ホームページのJIS試験に適用してしまっている例が多数確認されています。過去、公募の仕様書に誤った試験の実施を事業者に求める記載が載っていた公共機関を何団体か確認したことがあります。
公共機関が実施し公表する検査として、非常に不誠実なものであることが理解いただけるでしょうか。
速やかに見直すことが求められている
総務省ガイドラインは、適切でない点がある場合は速やかに対応を見直すことを求めています。この機会に、必ず最新の総務省ガイドラインを確認し、自団体の取組を再確認してください。
また、適切でない取組、急ぎ求められる対応について、次回以降のコラム、セミナーでも解説を予定していますのでご活用ください。
解説セミナー
- A.A.O.特別セミナー「実践解説:総務省ガイドラインの求めるJIS改正への対応」
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次回以降のコラム
総務省ガイドライン(2024年版)が求める取組について、より詳細に解説予定です。
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